河野氏は麻生財務相が束ねる「麻生派(衆41人、参12人)」の所属だ。しかし、だからと言って、当の麻生氏から次期リーダーとして絶大な信頼を得ているかと言えば、全くそうではない。菅政権で同じ閣内にいても、2人が冗舌に会話をしている場面はほとんどない。麻生氏が、河野氏を信用しきれていないのは「脱原発」に象徴される、麻生氏から見れば突拍子もない言動の数々だという。

「麻生さんの本音は『お前、何、考えてんだ』でしょう」(同)

■「反安倍・麻生」の結集

 その河野氏は「脱安倍・菅」「古い派閥政治」への言及を独特の微妙な言い回しで回避し続けている。例えば会見で「森友再調査」を否定してみせ、細田派への配慮をちらつかせる一方、経済政策では日銀重視の需要型の財政・金融政策とは違う、どちらかといえば従来の自民党型の社会保障を重視し、需要ではなく経済の供給部分の改革に行革担当相としての実績もアピールしながら踏み込んでいる。会見ではアベノミクスに対する評価には具体的には触れていない。つまり、岸田氏に比べると「脱安倍」路線は明確だ。

 その意味で安倍・麻生両氏が恐れるのが、河野氏の元への「反安倍・反麻生」勢力の結集だ。中心人物は3人。石破元幹事長、小泉進次郎・環境相、そして二階派(衆37人、参10人)を率いる二階幹事長だ。結局、今回の総裁選の本当の意味での権力闘争は、安倍・麻生派閥とそれ以外の派閥の代理戦争ということになる。

 中でも安倍、麻生の両氏の政敵と言われる石破元幹事長の影響は大きい。大きいが故に、それを受けいれるか否かで、当初、河野陣営も議論が割れた。

「石破さんは自民党内野党だから、彼がこっちの陣営とのニュースが流れるだけで、それはもう、安倍・麻生陣営を刺激するでしょ。しかも、太郎さんは麻生派だからね」(自民党議員)

 石破氏と麻生氏の因縁は2008~09年の麻生政権時代にさかのぼる。当時、石破氏は農水相だった。麻生内閣の末期、石破氏が「このまま麻生さんでいったら、自民党が3分の1になる」と麻生氏に退陣を迫ったことがきっかけだと言われている。

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