
■長期政権の副作用
──危機管理においても相当、考え方に相違があるはずです。
緊急事態下では意思決定を収斂(しゅうれん)させて対応しなければならなくなります。安倍・菅政権で「この政策は誰が責任者なのか」「どのような根拠でこの政策が採用されたのか」など閣内ですら意思統一が徹底されない場面が多々ありました。国民を最も不安にさせたのが「後手後手」の対応です。これらも、もしかするとこの党内の「バラバラ感」がガバナンスの欠如につながっているのかもしれません。
緊急事態下での意思決定は、とにかく時間との勝負です。国民が求めている政策を、一定の速度をもって実現するためには、自民党という政党の体質では極めて難しいと思います。
──「安倍・菅政権」を振り返り、どんな感想を持ちますか?
菅政権は安倍政権の「亜流」でした。つまり、長期政権の副作用というか、非常にまずかった点が、より象徴的に浮き彫りになって、その結果、国民の支持を得ることができなくなり、菅首相は1年で政権を投げ出すことになりました。
■「低党高邸」と忖度
具体的に言うと国会でも「説明をしない」ことが安倍政権の特徴でした。菅政権では拍車がかかります。最たるものが緊急事態宣言下での東京五輪の開催です。緊急事態宣言をいつまでにするのか、という国民の最大の関心事を政治的な思惑で決定しました。二言目には「専門家の意見を聞く」と言いながら、菅首相本人は非常に非科学的、反知性的な意思決定を繰り返したことも。まさに安倍政権の悪かった点が凝縮された格好でした。最後の最後には、菅首相の前で政府対策分科会の尾身茂会長が、首相の判断について疑問を呈する場面が何度もありました。人事権を握られている官僚機構は、政権への忖度(そんたく)を重ね、その結果、政府が機能しなくなったのです。
──官邸主導の結果、現在の自民党は内部から声を上げることが極めて難しくなっています。
安倍・菅政権を振り返ると、「低党高邸」の言葉通り、党よりも官邸の権力が強大になりました。党内で活発な議論をしてそれを政策として反映するのではなく、官邸の意向が先にあって、それに異論を挟む議論は許されない。そうなると、党だけでなく霞が関も官邸の意向を忖度するようになってしまいます。
──立憲民主党は政権交代したら、最初の閣議で決定する項目を具体的に発表しています。霞が関の抵抗を受けると思いますが、実現可能ですか?
例えば、選挙で政権が代われば、それは国民の意思です。その意思によって霞が関は動きます。政治は誰がやるかによって絶対に変わります。自民党政権によって隠蔽された公文書や映像などは、その日のうちに開示できるように動きます。政権が代わるというのは、そういうことなのです。これからも、経済、子ども、女性、気候変動、エネルギーなど、順次、政権公約を発表していきます。
(構成/編集部・中原一歩)
※AERA 2021年10月4日号