朝井さんが白鵬杯の実現に向けて奔走していたとき、白鵬は常に協力を惜しまなかった──というわけでもなかったと、朝井さんは苦笑しながら振り返る。
「こういう用事があるから大阪に来てほしいと伝えても、腰が重くてなかなか来てくれません。それなのに、大会直前になってから『こんなこともしてほしい』と要望を出してくるので頭にきたこともありました」
白鵬には、入門直前に故郷に帰りたいと涙したときのような子どもっぽさも同居している。それでも朝井さんは白鵬を支え、大会実現にこぎつけた。それは高い志に賛同したからであり、白鵬に人間的な魅力があるからだろう。今も白鵬の周りには、かつての朝井さんと同じように支えている人が何人もいる。引退後の白鵬にとっても、それは貴重な財産となるに違いない。(相撲ライター・十枝慶二)
※AERA 2021年10月11日号より抜粋