◆ネット時代への対応追いつかず

 皇室経済法により、民間人になった元内親王に皇室は経済援助をできない。海外送金を伴うなら日米の税務当局にも把握される。記事は虚偽情報である。しかし、小室さんが今後も「皇室マネー」で優雅に暮らしていくかのような印象が広がってしまう。

 現代は、「ポスト真実の時代」と言われる。事実かどうかはこの際、問われず、自分の信じたい「真実」であることが、事実性より重要になっている。女性誌は、検証不可能な「宮内庁関係者」「皇室関係者」の証言を乱発する。小室さん親子ならこんなことをやっていそうだという、フェイクニュースと受け取られかねない情報を流し続けている。

 眞子さまを追い詰めたもののひとつが女性誌であったことは疑いがない。

 宮内庁の対応にも問題がないわけではない。ここまで虚偽を報じられながら、手をこまねいていた。これは、ネット時代の世論形成への対応が出来ていないためだ。

 宮内庁のメディア対応は、戦前の枠組みのままである。戦時期、情報統制のために、記者倶楽部(宮内記者会)に入ることができる報道機関が絞られ、1社ごとの登録できる人数も限られた。情報の流れを限定するためである。現在、宮内記者会に常勤社として加盟するのは15社で、宮内庁はこの加盟社だけを対象に記者会見や資料提供を行う。報道体制は戦前を引きずっている。週刊誌、ましてやネット世論など眼中にないように見える。宮内庁が反論しないことをいいことに、近年、皇室報道のフェイク化が加速している。

 宮内庁が行うべきことは第一に皇室、とくに経費に関する透明性を高め、批判を受けても反論できる情報公開を進めることである。第二に、週刊誌等の情報訂正要求をもっと丁寧に行うべきである。第三に、ネット上に皇族への誹謗(ひぼう)があれば「発信者情報開示請求」で悪質な投稿者を特定することも検討すべきである。

 今のまま異様な言論を放置すれば、第二、第三の眞子さまが出かねない。

週刊朝日  2021年10月15日号

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