また、相馬市は中高生への接種に先駆け、19歳以上への接種も進んでいた。
「予約の手間を省くためこちらから日時を指定したことや、無料の送迎バスを運行することで接種へのハードルを下げました。また大人に関しては、地区ごとに集団接種の日を指定していたため、近所の人と一緒に受けるという安心感もあったのではと思います」(原部長)
■中高生の接種が進んだ理由
こうして、保護者世代への接種があらかじめ進んでいたことが子どもの接種につながっていると、渋谷医師も指摘する。
「納得感でいうと我々専門家の意見より、保護者や周りの人の存在のほうが大きい。接種後の調査を見ても中学生、高校生ともに『同居している20歳以上(中学生の場合は高校生以上)の家族全員が接種している』と答えた生徒が9割を超えています。保護者が打って、『副反応が出ても大丈夫だった』という安心感があったこと、加えてデータでも副反応が数日以内で治まることを示したことが、子どもの接種にもつながっているんだと思います」
渋谷医師は「世界的に見ても、子どもへの接種はますます進んでいく」とみる。
「ワクチン接種が進めば、感染はワクチンを打っていない人の間で広まります。そのため、大人への接種が進むにつれ、ワクチンを接種していない子どもの間で感染が広がるようになりました。12歳以上への接種が進めば、次はもっと幼い年齢の子どもに感染が広まるでしょう。既にファイザーなどで11歳以下への治験が進められていますし、今後もさらに接種が加速すると思います」
さらに「保護者の方が副反応を心配する気持ちはもちろん分かる」としたうえで、こう話す。
「子どもへの副反応が大人と比べて特に強いということはありません。現在、従来株からデルタ株に置き換わり、子どもも必ずしも重症化しないとは言えなくなってきました。さらに、たとえ軽症であったとしても、ロング・コビッドと呼ばれる長期的な合併症などを発症するという報告がありますし、これに関してはよく分かっていない部分も多い。ワクチン接種をすれば、感染しても軽症で済みますし、ロング・コビッドの発症も減るというデータが出ていますので、子どもでもなるべく打ったほうがよいと思います。特に基礎疾患のある子どもはぜひ打ってほしい」