「顔認証機能付き防犯カメラ」が作動していることを示す駅構内のステッカー(JR東日本提供)
「顔認証機能付き防犯カメラ」が作動していることを示す駅構内のステッカー(JR東日本提供)
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 駅での防犯対策として、JR東日本が顔認証機能付きカメラを用いて刑務所からの出所者や仮出所者の一部を検知する仕組みを導入していたことが報じられた。同社は「社会的なコンセンサスがまだ得られていない」として出所者らの検知をとりやめるとしたが、このケースは「治安」と「人権」を巡る問題に一石を投じている。顔認証機能付きカメラを巡る問題について、法律の専門家らに見解を聞いた。

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 顔認証機能付きカメラは、人の顔の特徴をデータ化した生体情報をAI(人工知能)などで解析し、特定の顔を検知することができるものだ。身近な例では、スマホの顔認証機能もその一つ。パスワードを入力する手間が省けるため便利だが、顔をマスクで覆っていると認識されないこともある。利用者はある程度のセキュリティーと利便性の高さに納得したうえで顔認証機能を設定するのが一般的だろう。

 しかし、こうしたデータを本人の同意なしに外部機関が収集していたら――。公共の場において、情報が収集され利用されるとなれば、個人のプライバシーの侵害と移動の自由を制限することにつながりかねない。そのため、利用には社会的な合意とルール整備が求められる。

 白鴎大の清水潤准教授(憲法、比較法)は、「顔認証技術の精度そのものが低く、それによって偏見と差別を助長するリスクがある」と指摘する。

「顔データの解析は人種によって正確度が違うため、欧米では問題視されてきました。特に、白人と黒人では、黒人のほうが不正確に判定されてしまう例が多発しました。例えば、オバマ元米大統領のファーストレディーであるミシェル・オバマ氏を男性と認識したり、黒人の顔をゴリラと認識したりするほど、精度に疑問があるものです。人種により誤認逮捕などが起きやすくなる不利益が出ることも懸念され、人種問題に敏感な欧米社会では、顔認証カメラの使用自体を禁止している地域もあります」

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アメリカ、EUでは使用禁止の動き