現実は残酷だ。モデルとしての将来をちらつかされ、気がつけば全くノーを言えない状況に追い込まれ死を願うような現実のなか、自傷するようにカメラの前で裸になる女性が無数にいる。そもそも「女性を強制出演させた」業者が簡単につぶれるような業界ではなく、だいたいが「強制」の概念そのものが都合よく解釈されている。たとえば、女性が業者と契約する時にはカメラが回るようになっている。これは「強制ではない」ことを証明するためのものだが、強制とは殴る蹴るなどの行為だけではない。心理的に追いつめられ、選択肢が他にない圧倒的に不利な状況に追いつめられることも「強制」だ。そして多くの被害者は、「怖くてノーを言えない」状況で被害にあっている。

 杉田氏の発言は徹底的に業者に寄り添い、AVを観て、JKを「買う」側の立場に寄り添ったものだ。いったいそれは、何のためなのだろう。

土井たか子氏(c)朝日新聞社
土井たか子氏(c)朝日新聞社

 杉田氏の著作は、単著も対談本も含めほぼ全て読んできた。もちろん最初から「こんな人」だったわけではない。1967年生まれの超バブル世代。就職にも苦労することなく、退職した後は西宮市の職員として、公務員として働きはじめる。政治的な関心が特に強かったわけではないが、当時の女性の多くがそうだったように土井たか子さんに憧れ、市役所前で演説をしていた土井さんに声をかけ妊娠中のお腹に触ってもらったエピソードなどもある。もともと自民党から出馬したわけでもなく、そもそも歴史問題を専門にしていたわけでもない。いったい、いつからだったのか。「『慰安婦』問題は左翼のねつ造だ! 日本を貶めるな」と声をあげる女性たちが、世に受け入れられ、ついには政権与党に認められるほどにまでになったのは。

 「男女平等は、絶対に実現しえない反道徳の妄想」とまで言い切っている杉田水脈氏を、自民党はまた、公認する。日本の右傾化とぴったり寄り添い、歩みを揃えて自らもどんどん出世していった杉田氏は、これからも自民党に守られていくのだろうか。

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