作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、総選挙の比例代表公認から浮かび上がる自民党の姿勢について。
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「LGBTには生産性がない」「女性はいくらでも嘘をつける」などの暴言が大問題になった杉田水脈氏が、今回も、自民党の比例代表公認に名を連ねていて驚いた。立憲民主党の本多平直議員が、「14歳と性交して罪に問われるのはおかしい」と発言したことが問われ議員辞職にまで追い込まれたことを考えると、自民党はどれだけ身内に甘いのだろう。杉田氏の発言を本気で問題だと考えていたら、公認の選択はないはずだ。
「女性だけれど女性に厳しい」ことを売りにする政治家は、日本では珍しくない。というか、
今の自民党を見ていると、そういう女性議員が候補者に選ばれるのだということが分かる。杉田氏もそもそも、「慰安婦」にさせられた女性たちに対する暴言などで安倍元首相に引き上げられた人だと思われる。一貫して、性暴力問題に関しては被害者の声を「嘘」と決めつける発言を繰り返してきた。
私が杉田氏の国会質問を初めてきちんと見たのは、AV出演強要被害者に対する発言だった。AV出演強要被害や、JKビジネスの被害、若年層が性産業に取り込まれていく問題に政府がようやく取り組もうとしていることに対し、これは左翼のプロパガンダだと反対する声をあげていた。2018年3月9日の衆議院内閣委員会でのことだ。杉田氏は、AV出演強要がそもそも嘘であるかのように、こう語っている。
「この職業に就きたいという女性は多いんですよ。引く手あまたで(ここで杉田氏は笑っている)、すごく狭き門なんだそうです。(業者は)わざわざ嫌がる女の子を出すなんてことしない。そんなことする業者は必ずつぶれるわけで。やってるのは小さな業者。必ずしも相談件数全てが、だまされてひどい目にあった人ばかりではない」
「被害を受けた」と相談してくる女性のなかにも嘘をついている人がいると、杉田氏は国会で発言したのだった。
杉田氏が言うようにAVが「憧れの職業に就いた女性が自主的に自己表現をしている作品」であれば、どんなに良いだろうと私も思う。残念ながらそれは、長い時をかけてAV業界や、AVを観ている人たちが築き上げてきた妄想に過ぎない。