「このショーのテーマは?」「自身の人生の節目は?」

「これからも羽生結弦『選手』と呼ばせてもらっていいですか?」

 呼吸を整えながら、羽生さんは笑顔で語った。 

「リアルタイムで羽生結弦というドキュメントを見ていただきたいと思って、このショーを構成しました」

「大きなものではなくて、本当に小さいことでいろんな節目がある」

「これからも『選手』と呼んでいただけたらうれしい」

 リクエストコーナーでは、会場のファンが点灯させる明かりの色を見て、16~17年シーズンのショートプログラム(SP)「レッツ・ゴー・クレージー」を選び、演じた。

 ショーではこれまでの競技人生を振り返るような映像が大型モニターに映し出されていった。これも一つの演出であり、次に滑る演目の「序章」にもなっている。

 転機となった11年3月の東日本大震災。その年、全国各地のショーや復興支援のエキシビションで滑った「ホワイトレジェンド」が大型モニターに映し出されると、会場のファンからはすすり泣く声も。そこから、12年3月にフランス・ニースで行われた世界選手権で初めて銅メダルを獲得したフリー「ロミオ+ジュリエット」へと転じた。

 暗いリンクを鮮やかな光で彩るプロジェクションマッピングも展開され、幻想的な世界が作り出されていった。氷上を自在に泳ぐような羽生さんが、そこにはいた。

■僕の人生史上初めて

 自ら振り付けを手がけた「いつか終わる夢」は、「めちゃめちゃ好き」というゲーム「ファイナルファンタジーX」のテーマ曲。人気ユニット「Perfume」の振り付けで知られる演出家のMIKIKOさんの助言を採り入れてつくり上げたという。

 その思いはこうだ。

「僕は五輪2連覇が夢でした。その後に4回転半という夢をまた改めて設定して、追い求めてきましたが、アマチュア競技のレベルでは僕は達成することはできなかったし、ISU(国際スケート連盟)公認の初の4回転半の成功者にはなれませんでした。そういう意味では、終わってしまった夢かもしれません。でもやっぱり皆さんの期待に応えたい、みたいな。自分の心の中のジレンマみたいなものを表現したつもりです」

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