デベロッパーは大規模マンションの開発を進めている。写真は柏市の大規模マンション(C)朝日新聞社
デベロッパーは大規模マンションの開発を進めている。写真は柏市の大規模マンション(C)朝日新聞社

 実のところ、コロナが始まる直前の2年前には「そろそろ天井か」という空気が不動産業界に漂っていた。当初は2020年夏に東京五輪が開催される予定で、それが終わると「祭りの後」である。2013年以来続いたマンション価格の高騰も、そこでいったん終了すると私も予測していた。

 ところが、誰もが予測しえない事態が起こった。言うまでもなく新型コロナの感染拡大である。

 2020年春、緊急事態宣言が出されて経済活動が急速に収縮した。不動産市場もフリーズ状態となる。業界の誰もが「ここから下落が始まる」と覚悟した。

 ところが、さらに予想外の事態が生じた。それはかつてない規模で実施された政府の景気対策である。3回にわたって補正予算が組まれ、その規模は累計76兆円にも及んだ。

 国民1人あたり10万円が配られた特別定額給付金は、大半が生活費や貯金に回ったとされる。しかし、最大200万円の中小企業向け「持続化給付金」や数十兆円も確保された企業への融資枠は、その多くが株式や不動産市場に流れ込んだ。

 私の周辺の不動産業者たちも、民間や政府系金融機関から目いっぱい融資を引き出して物件購入に走った。それがちょっとしたバブル現象を引き起こしながら、今に至っている。

 デベロッパーはさらに値上がりした土地を仕込んでマンションを開発する。その販売価格は当然、コロナ前よりも高くなっている。

 値上がりは東京都心だけではなく、近郊や郊外にも及び始めた。ただし、マンションの売れ行きは都心エリアではそれなりでも、郊外へ行くほど悪くなる。郊外の大規模物件などは、軒並み販売不調に陥っている。

 その理由は、個人所得の減少にあると言ってよい。国税庁は2021年9月に「令和2年分民間給与実態統計調査結果」を発表した。それによると同年の平均給与は433・1万円となり、前年比でマイナス0・8%、金額で3・3万円減少している。減少は2年連続。ここ20年で見ても、緩やかに減少している。

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都心と郊外の「温度差」