
「実を言うと大学のサークル文化はもうだめです。突然こんなこと言ってごめんね。
(略)2、3年後にコロナ以前の大学を知る学生は全員卒業します。それが終わりの合図です。
程なく大きめのサークルすら消滅するので気をつけて
それがやんだら、少しだけ間を置いて新たな若者文化が始まります。」
8月中旬、発信されたこのツイートには「いいね」が約2万件つき、約9千回リツイートされた。つぶやいたのは、今春、上智大学を卒業した茂木響平さん(24)だ。在学中は、大学がペットボトルで販売する「大学ブランドの水」の味を飲み比べるサークルを立ち上げたり、早稲田大学で50年以上続く講演会の企画サークルで活動したりしてきた。茂木さんは言う。
「8月中旬ごろ、今年も多くの大学の学園祭がオンラインになりそうな見通しがわかり、さらにコロナのデルタ株も猛威を振るっていて、いよいよ危ないと思いツイートしました」
茂木さんによると、大学サークルの危機はコロナ前からあったという。ここ数年、大学3年の夏インターンが一般化し、3年の秋で引退するサークルが多くなった。これに伴い、運営の主体が2年生に下がった。
「ところが今年の1、2年生はコロナ前のサークルの活動を知りません。このため運営の継承が難しくなっているのです。危機感を持った僕のようなOBや就活を終えた4年生が、サポートに入っているサークルもあります」(茂木さん)
■大学生がプチ社会人化
加えて、SNSの発達に伴い、企画力のある学生は活躍の場として必ずしもサークルを選ばなくなった。起業や社会貢献の意識の高まりもあって、長期インターンに従事する学生も増えた。
「大学生がプチ社会人化し、そう仕向ける圧が年々強まっているのも感じます。僕自身は学生にしかできないことや、学生だからこそできることにこだわり活動をしてきました。そうしたサークル文化も残っていってほしいです」(茂木さん)
大学サークルの存続に危機感を募らせているのは、学生だけではない。明治大学教授で学生部の副部長を務める、木寺元さんも8月末、ツイッターで危機を伝えた。木寺さんは言う。
「明治大学にはサークルが約300あり、昨年の新入生の加入率は約1割でした。今春は例年並みの8割まで取り戻しましたが、4月中旬にまん延防止等重点措置に入り、その後、緊急事態宣言が続きました。例年であれば活動のピークである8月になっても対面での活動ができず、学園祭の準備もままならない状況に胸が痛みました」
木寺さんも茂木さん同様、ここ数年、学生のサークル離れを実感していた。アクティブラーニングの導入もあり、学生の人間関係形成の場はサークルから少人数のゼミや語学の授業へ移った。コロナ禍でその傾向はさらに強まりそうだ。
「問題は、大学の教員は研究を基準に採用されており、若者の心理や人間関係構築の知識やスキルを持ち合わせているわけではないことです。学生間の関係がこじれた場合、サークルは簡単にやめられますが、授業は単位の縛りがあるため難しい。教員が学生間のトラブルに関与しないといけなくなることも今後考えられ、そのためには教務部のフォロー態勢が不可欠です」(木寺さん)