——櫻井流の“仕事の流儀”は徹底的に調べること。そして自分の言葉で伝えること。オリパラの開催期間は、カメラが回っていない場所でも独自に取材を重ね、選手ひとりひとりの裏側にある物語までを視聴者に伝えた。

■戦いに赴く気持ちで

櫻井:パラリンピックの選手は本当にいろいろな方がいる。選手それぞれの努力と、何がすごいのかを正確に伝えたいという思いがありました。でも、言葉選びは難しい。たとえば、障害がある「のに」すごい、ではなくて、障害がある「中で」積み重ねた努力が尊いと僕は思うんです。でもそうした表現は、放送に乗せると違和感を持つ方もいるだろうと思いました。結構キワキワのところでやっている感覚で、ある種、毎日、戦いに赴くような気持ちでもありました。興奮状態だったんでしょうね。パラリンピックが終わった翌日か翌々日、『あれ? なんでこんな疲れてるんだろう』と思うほどグッタリきて。15、16日連続で生放送だったこともあると思うけど、そんなふうに疲れを自覚したのは初めてだったかもしれません。

——これまでも国民的アイドルとして多忙を極めてきたはずだ。だが、「疲れた」と感じることは一度もなかった。理由を尋ねると、不思議そうに首をひねった。

櫻井:なぜか、わからない(笑)。

 僕の感覚としては、仕事は常にご一緒する目の前の人に喜んでもらおうというスタンスでやっているんです。結果として波紋が広がるように大きな反響となることはありますが、最初から大きな反響を狙ってやっていないんですね。仕事で目の前の人が笑顔でいてくれたり、僕を選んでくれたスタッフに『やっぱりあいつにやらせて良かったな』と思ってもらえれば、うれしくて仕方ない。だから疲弊しないのかもしれません。

 僕の仕事はリアクションをいただくことで、そのリアクションでまたガソリンを注いでもらえる。いいリアクションが理想ですけど、仮にネガティブなものだとしても、興味を持ってもらえないよりはいい。疲れないのはきっと、皆さんからいただいているエネルギー量が膨大だからだと思います。

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