今でも皇居内では、年間20以上に及ぶ宮中祭祀が厳格な格式に則って行われています。苗字も権利も思想も持たず、時には感情も顕にできないお立場の中、粛々と「国民の象徴として、国民に代わって祈りを捧げる」という天皇陛下の御務めは、日本人にとってもっとも尊く「プライスレス」なものではないでしょうか。

 もちろんすべてが神頼みでは解決できませんが、少なくとも「お賽銭を投げて祈る」ことで安心を得て暮らしている身としては、その根本を担ってくださっている天皇陛下および皇族方を指して、「税金の無駄遣い」だの「国民の金でぬくぬくと暮らして」だのと、ヒステリックな感情にまかせて無責任な言葉を吐き捨てるなど、到底考えられません。むしろ、その「祈り」を守って頂くためなら、大袈裟な話「いくらでも税金を使って頂いて構わない」ぐらいです。

 とまあ、此度の眞子内親王のご結婚に際し、特にネット上では「理論的でまっとうと見せかけた感情論」が数多く散見されました。小室さん絡みの問題とは別に、皇室に対し攻撃的になることは、間違いなくこの国の豊かさを損ないます。豊かさとはお金じゃないのよ。

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

週刊朝日  2021年11月12日号

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