冒頭のヨシエさんのように、子どもを味方につけるのも一つの手だ。「子どもに心配させたくない」と隠したがる人もいるが、いざという時のため、身近に頼れる存在を作っておくと良い。実際、子どもが親を引っ張って相談に連れてくるケースも少なくないという。

 加害者側の解決策はあるのか。DV加害者に対するカウンセリングも行う前出の松林さんが、加害者に対して行うのが更生のためのプログラムだ。最初は通うことに抵抗する人も多いが、妻から離婚調停を切り出されたことを機に、変わろうとする夫もいる。更生プログラムでは、何が暴力かを知ることから始まり、なぜ暴力的な言動をしてしまうのか原因を掘り下げる。そして対等な関係のあり方や柔らかいコミュニケーションの仕方について、実践しながら学んでいく。

「暴力的な言動に至る原因の多くに、例えば親が同じような態度だったなど、生い立ちからの影響があります。加害者としても、自分の暴力の原因が見えてくると安心感を持つのか、克服しようという気になる人も多いのです」(松林さん)

 またリタイア後、家以外に活動する場所を持つことは、加害者にとっても有効な対策の一つになる。外で活動することを嫌がる男性には、仕事での地位が高かった人や、プライドが高いなどの共通点があるという。

「外で活動する人を見下し、自分は家でくすぶる。そういう人に限って妻に威張りがちです。エネルギーを良い形で発揮できる場所を外に持つことで変われる人もいる。年齢を重ねても、相手の言葉に聞く耳を持とうとする人は変われる可能性があります」(同)

 亭主関白の時代を生きたシニア世代でも、「老後ぐらいは穏やかに安心して過ごしたい」という思いから、「嫌なことは嫌」とはっきり意思表示する女性も増えた。厚生労働省が今年発表した調査によれば、2020年に離婚した夫婦のうち、20年以上同居した「熟年離婚」の割合が21.5%と過去最高を更新した。

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