子育て世代は、いわゆる「氷河期世代」と重なる。バブル崩壊後に続いた不景気の時代に就職活動を行っていた世代で、30代後半から50代前半あたりの年齢が該当すると言われる。
コロナ禍でも氷河期世代の苦難は続いている。政府は2019年、氷河期世代の正社員の数について「20年から3年間で30万人増やす」という目標を掲げていたが、今年内閣官房がまとめた資料によると、氷河期世代の20年の正規職員・従業員の数は19年と比べて横ばい。新型コロナの感染拡大を受けて、改善が進まなかったと見られている。橋本教授はこう指摘する。
「就職氷河期世代は非正規雇用で所得が低い人も多い。子どもを持てない人も少なくありません。自民党は住民税非課税世帯にも現金10万円を給付するといっていますが、非正規労働者は住民税を払っていながらも、生活に困っている人が多い。自民党と公明党の給付政策には生活に困っている氷河期世代などを支援する視点が抜けています。子育て世帯に給付するとなれば、子どものいる正社員と子どものいない非正規社員の間にもともとあった格差が、さらに拡大することになります」
もう一つ「経済効果が見込めるのか」などと批判の声が上がっているのが、マイナポイントによる経済対策だ。
公明党の公約ではマイナンバーカードをもっている人を対象に、3万円分のポイントを支給するというものだった。しかし、自民党との協議を経た結果、新たにカードを取得した人に5000円分、カードを健康保険証として使うための手続きをした人に7500円分、預貯金口座とのひも付けをした人に7500円分、最大で合計2万円を支給する形で最終調整に入ったと報道されている。
先の岡さんはこう語る。
「経済対策というよりも、マイナンバーカードの普及が目的と言えるでしょう。また、この政策で一番利するのは、ポイント事業者のように思えます。10万円の給付でもそうですが、給付に制限をするかしないかといった小さな議論になっており、出てくる政策はその折衷案で中途半端。これでは政策にダイナミズムがありません。岸田政権の前途は多難のように見えます」
今月中旬に発表される経済対策はどれほど魅力的で効果があるものになるのだろうか。注目したい。(AERA dot.編集部・吉崎洋夫)