当選後の議員らの初登院の様子(写真はイメージです)
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 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、ジェンダー平等を政策に掲げることについて。

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 前新潟県知事で、今回新潟5区から衆議院議員に当選した米山隆一氏のツイートが話題になっている。

 きっかけは「ジェンダーや気候変動などの左派政策は共産党に任せ……」などと野党共闘の今後を分析した政治ライターのツイートだった。米山氏はそれに対し、「ジェンダー平等や気候変動も出し続けていいと思います」と反論したうえで、「出す順番としては、(1)経済(2)福祉(3)ジェンダー・気候変動だと思います」「(3)を1番に打ち出すと、『余裕のある人の趣味』に見られてしまうので」と記したのだった。

 今回、ジェンダー平等を大きくうたった野党共闘の選挙結果を受け、「ジェンダー平等は票にならない」というような声をネットで見聞きするようになった。米山氏のこの発言についても「間違っていない」「一般的な感覚はそうだ」と評価する声も大きい。ジェンダー平等などを言うから野党は勝てなかったのだ、という声もある。まずは経済、まずは福祉……それがよくなれば自然にジェンダー問題も解決するだろう……と「ジェンダー平等」を政策に掲げること自体への疑問も少なくない。

 私は今回の選挙で、野党共闘の候補者たちの街宣を中心に見てきた。

 今回、ジェンダー平等は重要なテーマのようにメディアでも報道されてきた。「選択的夫婦別姓」についての各党の姿勢も、テレビのニュースが報じたのは珍しい。ジェンダー平等には消極的に見える自民党ですら、多様性とジェンダー平等を否定することはできず、維新の政策にもジェンダー平等は入っていた。

 とはいえ、だ。ジェンダー平等を第一に大きく掲げた候補者は、実はそこまでいなかったのではないか。それこそ野党共闘の候補者の多くは、米山氏の言うように3番目くらいの位置づけでジェンダー平等を語っていた印象だ。まずは経済! そしてコロナ対策! 時間的“余裕があれば”、ジェンダーとか多様性……というものだった。「ジェンダー平等」に関心の強い候補者であっても、それをどれほどの強度で主張すべきか迷っていた面もある。ジェンダーを声高に言えば、「ジェンダーってなに?」の有権者には響かず、「女のことしか考えていないのか」という男性有権者の票を落としかねないからだ。ジェンダー平等を訴えながらも、「ジェンダー平等にすれば男性も生きやすくなる!」と、男性への呼びかけを忘れないことも候補者に求められていた。

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