(週刊朝日2021年11月26日号より)
(週刊朝日2021年11月26日号より)

 さらにその後、母親は認知症を発症。手紙や電話のやり取りだけでは内容を理解してもらえないだけでなく、母親から「私の財産を奪おうとしているのか!」とあらぬ疑いをかけられるなどした結果、Dさんはついに過労で倒れてしまった。

「法定相続人が複数いる場合、一人でも意思確認が取れなければ、財産の継承は進められません。ただ、Dさんの母親のようにやむを得ぬ事情がある場合は、成年後見人を立てることで、本人の意思確認がなくとも遺産分割協議を進められます。ただし、成年後見人はあくまで本人に代わって財産を管理する者。分割した遺産は、成年後見人やほかの家族が自由に使えるわけではありません」(岡さん)

 また、弁護士や司法書士など、外部の専門家が成年後見人になった場合、財産の管理費用が毎年発生することも頭に入れておく必要がある。

 コロナによって、家族間のコミュニケーションの希薄さが浮き彫りになった側面もあるという。

「相続トラブルのほとんどは、連絡ミスや説明不足といった“コミュニケーション不全”をきっかけに起こります。何十年も連絡をとっていない親族から、一方的に書類を送り付けられて『印鑑だけ押して』と言われても、到底納得はできない。今回のコロナ騒動で、家族や親族間の関係性の脆弱さが、より表面化した感じはしますね。半年に1回でいいから兄弟姉妹と電話で話す、年賀状だけは毎年送り合うなど、最低限であっても付き合いを継続しておくことがトラブルを防ぐ要になると思います」(同)

◆おひとりさまの空き家は放置

 一方、コロナ以外で最近増えつつあるのが、「おひとりさま」の相続トラブルだ。行政書士の加藤さんは、「法定相続人がいない場合、故人の財産、特に不動産は放置されたままになる可能性もある」と話す。

「以前、故人の遠戚から『遺産整理を手伝ってほしい』と頼まれたことがあります。故人は、親や配偶者、子もいない、いわゆる“おひとりさま”でした。しかし結論から言うと、依頼人と金銭面で折り合わずに契約には至りませんでした」

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