旧統一教会による高額献金などが社会問題化するなか、大学が対応に苦慮している。どのような対策が必要なのだろうか。独自にユーチューブや特別講義で、学生に注意を呼びかける大阪大学の事例を紹介する。2022年11月14日号の記事から。
【写真】1人で歩く学生を待ち構えるカルトの勧誘手口「待伏ノ術」はこちら
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大学構内を一人で歩いていると、声をかけられた。
「今、何回生(何年生)?」
「就活とかって、大変やね~」
雑談に応じていると、OBを名乗る男性が現れ、就活イベントの誘いを受ける。連絡先を交換したが、実は、相手はカルト集団の関係者だった──。
大阪大学のユーチューブで公開されている、不審な団体の勧誘を再現した動画のワンシーンだ。学生に後ろから声をかける「追付ノ術」や正体を隠して近づく「サークル偽装ノ術」など、カルト団体の勧誘手口を紹介している。
「一度人間関係を作ってしまうと、カルトだと気づくのは難しいんです」
そう語るのは、大阪大学キャンパスライフ健康支援・相談センターの太刀掛俊之教授だ。同大では2006年に新入生を対象とした必修の特別講義「大学生活環境論」を新設。カルトの予防、啓発を続けている。
「ただ、知識としてわかっていても、気づかないうちに接点を持ってしまうこともあります」
たとえば、動画にもあるサークル偽装。近年は持続可能な開発目標(SDGs)やゴミ拾いをうたい、学生に声をかけるケースが増えている。3年前、太刀掛教授のもとに学生から、キャンパス周辺でボランティアについてのアンケートを行っている人がいると相談があった。調べると、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関連団体であることがわかったという。(編集部・福井しほ)
※AERA 2022年11月14日号より抜粋