顧客を“ターゲット”にする考えは、中国地方会の政治活動方針を記した昨秋の文書「令和4年参議院選挙に向けた目標・取組」にも記されていた。後援会活動を始めるまでの重要施策として、こう挙げている。
<窓口来訪者の記録(社員の協力も願う)>
<会員自らが窓口に出て積極的に声掛け(雑談を含む)を行う>
◆顧客情報を政治流用した疑いも
近畿地方会と中国地方会は朝日新聞の取材申し込みに対し、「取材は全国郵便局長会で受ける」として応じなかった。
全国郵便局長会は11月2日付の朝日新聞への回答書で、カレンダー配布は「選挙とは全く関係ない」とし、顧客情報の流用も「全く当たらない」と、疑惑を全面否定した。カレンダー関連の指示は業務上のもので、「支援者」とは「後援会に入ってくれそうな人」ではなく、「郵便局を理解し、郵便局を支援してくれるお客様」を指すのだと説明した。
だが、少なくともカレンダーの配布先が「お客様」だと局長会が認めたことで、近畿地方会は問題のエクセルファイルによって、顧客情報を政治流用した疑いが一段と強まる。
同会のファイル「カレンダーお届け先リスト」は、タイトル欄をクリックすると「支援者名簿」や「後援会名簿」にワンタッチで切り替えられる機能を備えていた。ロビーでつかまえた顧客を「支援者」と名付け、カレンダーを配り、いずれは後援会入会につなげようと考えていたことは疑いようがないのではないか。
全国郵便局長会はこの近畿地方会のファイルに関する質問にはほとんど答えずに、カレンダー配布と参院選が「全く関係ない」と主張しているのが現状だ。
冒頭の近畿地方会の会合では、後援会活動は停止する一方、「支援者」を増やす活動は続ける方針が示された。会合に出た局長のひとりは「うまく説明できない」と漏らした。
日本郵便は、顧客情報の政治流用疑惑について調査し、結果を近く公表する。全国で何人の局長が何人分の顧客情報を政治利用していたのかが焦点だが、同社は調査を急ぎ、調査対象をごく一部の幹部に絞っている。