日本郵便が経費での購入を認めていたカレンダー「郵便局長の見つけた日本の風景」2021年版(筆者撮影)
日本郵便が経費での購入を認めていたカレンダー「郵便局長の見つけた日本の風景」2021年版(筆者撮影)

 昨年の今ごろ、自宅を訪ねてきた郵便局長からカレンダーを手渡されていたとしたら、気をつけたほうがいいかもしれない。名前や住所がリスト化され、政治団体に加入させるターゲットとなりかねない「極秘ファイル」があるからだ。

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「後援会の活動はしばらく見合わせます。再開時期は未定です」

 11月初め、近畿地方郵便局長会の幹部を集めた会合で、そう連絡があった。約1万9千人の局長らでつくる任意団体の全国郵便局長会は来夏の参院選で、同会前副会長の長谷川英晴氏を自民党公認で擁立する方針だ。

 だが、10月に立ち上げたばかりの後援会について、少なくとも近畿地方では、衆院選期間中に中断していた入会募集などの活動再開が見通せなくなっている。

 理由は、朝日新聞10月28日付朝刊が報じたエクセルファイル「カレンダーお届け先リスト」だ。全国12の地方郵便局長会の一つ、近畿地方会が昨秋に局長らに配ったもので、人気アニメ「鬼滅の刃」に引っかけた利用マニュアル動画まで作られていた(参照:郵便局長の「カレンダー配布先リスト」入手 解説動画は鬼滅の刃風)。

◆入手した極秘ファイルの中身

 ファイルの中身は、局長がカレンダーを配る相手について、名前や住所、同居者などをパソコンで記入するもの。注目すべきは、参院選での投票行動をA~Cの3段階でランク付けする評価欄があったことだ。

 「A」ランクの基準判断は、ファイルにこう記されている。

「良い返事だけでなく、必ず投票に行き、氏名を書いてくれるとの確信を持てる人」

 氏名とは、参院選で擁立する自民党公認の組織内候補を指す。長谷川氏の擁立が正式決定したのは今春だが、現場の局長たちは、昨年のうちから来夏の「投票行動の評価」を収集し始めていたとみられる。問題なのは、いったい誰の投票行動を評価していたかだ。

 カレンダーの配布先との「関係」を記す欄には、親戚や友人・知人のほかに「お客さま:ロビー活動で対象になった方」との選択肢がある。ロビー活動とは、局長が郵便局のロビーで声かけする活動。つまり、郵便局のふつうの利用者が“標的”となっている。

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