東京大学の安田講堂
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 先週号では、日本が「犯罪大国」になるという米国人投資家ジム・ロジャーズ氏の懸念について書いたが、今週は、「私がもし10歳の日本人なら、直ちに日本を去るだろう」という彼の言葉の意味を深掘りしてみたい。

【写真】米国の著名投資家ジム・ロジャーズさん

 この言葉は、日本の将来に希望がないから、早めに見切りをつけた方が良いという意味に理解されている。しかし、彼が「10歳」という年齢を挙げたのには、もう少し別な意味があるようだ。

 日本の将来が暗いことは、多くの人に理解され始めた。しかし、日本を捨てて海外に移住することまで考える人は少ないだろう。ましてや、それを実行に移す人は極めて少数のはずだ。

 特に、日本人は英語力が弱い。日本を訪れた外国人が、日本がG7の一角を占める国なのに、英語を話せる人が少ないことに驚き、さらに、多くの人が6年間英語を学んでいると聞いて二度びっくりという話は、今や日本を揶揄するときの鉄板ネタとなった感がある。

 少子化で若者が減少しているが、それでも、日本には優秀な若者がたくさんいる。英語力が高ければ、日本に見切りをつけて海外に出る若者が増えて、「若年人材空洞化」などという言葉ができていたかもしれないが、文部科学省のダメ教育のおかげで、国際的に見れば能力が極めて低い経団連のダメ経営者がいる企業でも、人材が集まる。 

 国際競争で出遅れ、給料も安く、休みも少なく、残業が多く、パワハラ・セクハラ当たり前の企業でも、英語ができない若者は他に選択肢がないから仕方なくそういう企業に就職する。

 経団連企業は、よく日本の学生の英語力のなさを嘆いているが、実は、そのおかげで途上国並みの劣悪な条件で労働者を集め、労働ダンピングで世界市場で競争することができるのだ。彼らは、文科省のダメ教育に感謝すべきだろう。

 そこで、「10歳」という年齢の意味だ。そこには、これからの人生を決める最も大事な時期に、日本で教育を受けるのは良くないという含意がある。日本より、アメリカや欧州、場合によっては中国の教育を受けた方がいいに決まっているから、10歳で国を出ろと言っているのだ。現に、ジム本人は、子供の教育のために、アメリカを出てシンガポールに移住したと明かしている。

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日本の英語力ランキングの驚くべき低さ