大学卒業者のうち、大学院(および専門職学位課程)に進学するのはおよそ10人に1人。出身学部の分野別に見ると、理学40.3%、工学35.6%、農学22.7%に対し、人文科学4.1%、社会科学2.2%と、いわゆる「文系」での進学率は極めて低く(「令和2年度 学校基本調査」)、文系での修士号保有者は、諸外国と比べても圧倒的に少ない。そのひとつには、就職活動などで大学院での経験が重視されにくい状況があるというが、なぜなのか。学部・系統別にみた大学院進学率の高い大学ランキングとともに、専門家の見解を紹介する。
【ランキング】卒業生の98%が大学院に進むのは?学部別・大学院進学率が高い大学<全6ページ>
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「大学院に進学するメリットはなかったと思います。就活でそれがプラスに働いたことはありません」
都内の不動産会社に勤める男性(28)はこう話す。男性は社会学部在学中に1年間アイルランドに留学。そこで出会った勉強熱心な学生に感化され、社会学研究の修士課程に進学した。就活ではその学びを生かせる調査会社などの面接も受けたが、地域のコミュニティーづくりにかかわりたいという考えから、不動産業界に身を置いた。
「大学院では海外での共同研究や学会発表などを通じて、文書作成やプレゼンテーションの能力が身についたと思います。しかし面接で、大学院の話はほとんど聞かれませんでした。給与も学部卒と変わらないし、会社は大学院卒にあまり価値を感じていないのだと思います。そう考えると、もったいない2年間でした」
■理系の大学院進学率 上位は国公立中心
冒頭に示したように、大学院進学率は文系と理系とで大きく異なる。表は、学部・系統別に2020年卒学生の大学院進学率が高かった大学を、ランキングにしたものだ(朝日新聞出版「大学ランキング2022」から)。
まず理系からみてみよう。工、理工学部では上位3つを東京工業大が占め、もっとも高い「物質理工」では、大学院進学率が98.3%にも及ぶ。同大は学部と大学院が連結した「学院」制度を取っている。以下、12位までは国公立大が並び、進学率は8割を超えている。