先日発表された宝島社『このマンガがすごい!2022』オンナ編14位にランクインした歴史漫画『魔女をまもる。』。16世紀に実在した医師ヨーハン・ヴァイヤーが医療の観点から魔女と断罪された人々を救おうとする本作は、発売されるやいなやSNSで大反響を巻き起こした。
その背景には、民衆を恐怖に陥れた「疫病流行」や「魔女狩り」が現在のパンデミックを彷彿とさせていたことや、主人公自身が恐怖に苦しみながらも真実を追求する姿勢に胸を打たれたという声も多い。著者である槇えびし氏に作品について聞いた。
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――まず、『このマンガがすごい!2022』に選出された感想は?
とてもマニアックな題材でしたので漫画という媒体でここまで評価していただけるとは思っておりませんでした。描いておいてなんですが、漫画の世界って広大なんだなぁと改めて感じました。大変有り難いですね。
――なぜ、作品の題材に実在した人物「ヨーハン・ヴァイヤー」や、「魔女狩り」というテーマを選んだのでしょうか。
ヴァイヤーとの出会いは『精神障害と心理療法』(高橋豊著/河出書房新社刊)という精神医学の研究と概念の変遷がまとめられている本でした。16世紀にヨーハン・ヴァイヤーという人物が魔女とされる人を精神医学的な見地から助けるべき患者だとしたことから“精神医学の祖”と呼ばれていることに興味がわき、描きたいと思いました。ですので、魔女狩りを選んだわけではなく、ヴァイヤーが対象だったということですね。
■日本人と西洋人の文化や教養の差
――歴史作品を制作する上で大変だったことは?
作品の世界を調べることで知ることができた学びのすべては楽しい経験でしたが、そこに行きつくまでが逆に大変でもあったし苦しみでもありました。ヴァイヤーに関する日本の書籍は少ないので、多くはネット上の論文などからの情報です。時には海外の文献にも当たったりして、それが本当に大変でした。