
半世紀以上にわたり第一線で活躍する名優であり、「許されざる者」「ミリオンダラー・ベイビー」で2度アカデミー賞の作品賞と監督賞を受賞したレジェンド、クリント・イーストウッドの監督40作目にして主演作「クライ・マッチョ」
アメリカ、テキサス。ロデオ界のスターだったマイク(クリント・イーストウッド)は落馬事故以来、孤独な独り暮らしをおくっていた。
そんなある日、元雇い主から、別れた妻に引き取られている10代の息子ラフォ(エドゥアルド・ミネット)をメキシコから連れ戻すという依頼を受ける。犯罪スレスレの誘拐の仕事。それでも、元雇い主に恩義があるマイクは引き受けた。男遊びに夢中な母に愛想をつかし、闘鶏用のニワトリとストリートで生きていたラフォはマイクとともに米国境への旅を始める。そんな彼らに迫るメキシコ警察や、ラフォの母が放った追っ手。先に進むべきか、とどまるべきか? 今マイクは人生の岐路に立たされる──。

本作に対する映画評論家らの意見は?(★4つで満点)
■渡辺祥子(映画評論家)
評価:★★★★
超高齢で監督・主演、しかも粋な美女と出会う、という監督だから可能なお手盛りの幸せがあることで★一つおまけ。生意気少年と甘いけれどいい加減ではない老人の出会いから生まれる確かなつながり。こんな晩年、悪くない。
■大場正明(映画評論家)
評価:★★★★
落ちぶれた孤独な老カウボーイの止まっていた時間が思わぬかたちで動き出す。世代や立場が違う人間との旅は、イーストウッドに最もよく似合う設定であり、彼が積み重ねてきた旅の終着点を見るような結末が心に染みる。
■LiLiCo(映画コメンテーター)
評価:★★★★
イーストウッドにしか出せない優しさが詰まっています。一言ずつに経験と温かみと思いやりを感じます。お茶目さも満載で思ったよりも笑いがたくさん。自分の言葉に責任が持てて、人を思いやれるのが本当の強い人。
■わたなべりんたろう(映画ライター)
評価:★★★
往年のイーストウッドの映画を彷彿させる箇所が幾つもあり楽しめる。ただ、大好きな監督であり俳優だからこそ、出演作は今作で最後でいいかもしれないと思った。それぐらいに歩き方などに老いを感じてしまったのも事実。
(構成/長沢明[+code])
※週刊朝日 2021年12月31日号