「ヘンな関係だと笑ってもらえると嬉しいですね(笑)。複数の視点で書くと、同じ場所にいても見ているものが違う。でも、どこかで重なっていることが読者に伝わるように書いています」

 世間の「空気」から逃れる二人は、互いの「気配」を読みながら距離をとって暮らす。

「空気は顔を合わせている人同士で『読む』もので、そこに軋轢(あつれき)も起こります。でも、この二人の場合はその段階にも行きつかない関係なんです。だから、いまのところは、『あなたに安全な人』なんですね」

 しかし、その関係はいかにも危ういバランスの上に成り立っているのだ。

「私自身、どうなるか分からないままに書いていました。自分の中から何が出てくるのか読めなかったです」と語る表情からは、たしかな手ごたえが伝わってきた。(南陀楼綾繁)

週刊朝日  2021年12月31日号

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