わたなべ・ひろと/1988年生まれ。NPO法人POSSE事務局長。雑誌「POSSE」編集長。社会福祉士。東京大学大学院総合文化研究科博士課程在籍(photo 本人提供)
わたなべ・ひろと/1988年生まれ。NPO法人POSSE事務局長。雑誌「POSSE」編集長。社会福祉士。東京大学大学院総合文化研究科博士課程在籍(photo 本人提供)
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 奨学金の返済に苦しみ、自死すら考える若者がいる。“日本の奨学金は「借金」だ”と奨学金の帳消しを求める「奨学金帳消しプロジェクト」代表の渡辺寛人さんに話を聞いた。AERA2022年10月31日号の記事を紹介する。

【グラフ】貸与型奨学金の利用者の推移はこちら

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 日本の奨学金は、学生支援をうたった「借金」としての性質が強いのが特徴です。

 私たち「奨学金帳消しプロジェクト」は7月、日本学生支援機構(JASSO)の貸与型奨学金を利用した元学生らに生活状況を尋ねるオンラインアンケートを実施しました。その結果、9月までに20代、30代を中心に奨学金を返済している約2700人から回答を得られ、そのうち約6割が進学時に300万円以上の貸与を受けたと回答。そして全体の28%は「返還を延滞したことがある」、10%は「自己破産を検討したことがある」と答えたのです。

 元々、奨学金は大学を卒業後にある程度安定した仕事に就けば返済が可能という、「未来」が担保になっていました。しかし、この20年間で日本の労働市場は大きく変わり、低賃金の非正規で働く人が増え、正社員であっても賃金カーブはほとんど上昇しない状況が続いています。とりわけ女性はこの傾向が強く、さらに家事や子育て介護といったケアの役割を求められる中、奨学金の返済の苦労を背負いやすい構造になっています。

 ところが、救済制度は不十分です。例えば月々の返済額を少なくする減額返還は、月の返済額が2分の1か3分の1になるだけで返済総額は変わりません。

 こうした状況が若者を追い詰め、若者の未来を奪っています。

 返済のため結婚や出産を諦めたり、ブラック企業をやめられなかったりします。風俗で働かざるをえない女性の方もいます。滞納者には、給与などを差し押さえる強制執行も増えています。追い詰められた結果、メンタルを壊し、自死を考える人も。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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