西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏は、日本シリーズの行方を予測する。
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日本シリーズが22日から始まった。2年連続でヤクルトとオリックスの組み合わせになった。クライマックスシリーズのファイナルステージの戦い方を見ても、しっかりと自分たちの強みを出した両チーム。頂上決戦にふさわしい。
ヤクルトの村上宗隆は13日のファイナルステージ第2戦で阪神・藤浪晋太郎から本塁打を放った。1点を追う三回2死一塁。フルカウントからの6球目、外角低めの球を左翼席に放り込む逆転2ランとなった。ストライクゾーンというか、見逃せばボールかもしれない球を打った村上をほめるべきである。ただこの場面、藤浪はまず、スプリット3球で、カウント1ボール2ストライクと追い込んだ。当然、高低に村上の目付けがいく中、4球目は真ん中高めに直球を選択した。この球の時にインサイドをつく選択肢はなかったか。次の5球目、外角のカットボールがボールとなった。そうなると、もう村上の中に内角の意識はなくなる。4、5球目にくるかもしれない内角球がこなかったのだから、思い切り踏み込める状況だったろう。
この一発はオリックスに強烈な印象を与えたことだろう。「村上に思い切り外角に踏み込まれたら、ストライクゾーンいっぱいでも本塁打になる」という情報をインプットしたはずである。
オリックスは第1戦で山本由伸が登板するだろう。山本は150キロを超えるカットボールを左打者の内角にキッチリ投げられる。この球を村上が意識する中で崩れてくれるかどうかだろう。それはオリックスの吉田正尚にも言える。ヤクルト投手陣が吉田正の脳裏に深く刺さるような印象ある配球をできるかどうか。それで容易に崩れてくれる2人ではないが、好き勝手に打たれては勝ち目はない。1、2戦で両軍の主砲をどれだけ崩せるかは大きなポイントだ。
互いに救援投手の質も高いし、強い球を投げられる。先発投手はペース配分を気にすることなく投げられる。ヤクルトには絶対的なエースはいないが、最少失点で試合を作る能力はある。戦力的には、投打ともに互角である。