岸田文雄政権への逆風が止まらない。旧統一教会の問題をめぐり野党が追及姿勢を強める中、岸田首相は解散命令請求も視野に、質問権行使の手続きに着手した。「背水の陣」で挑むこの一手で、局面を打開することができるだろうか。
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「旧統一教会と関係を持たない私が責任をもって問題解決していきたい」
岸田首相は10月17日の衆院予算委員会で旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)を巡る問題についてこう語気を強め、質問権を行使した初の調査で組織の実態解明を進めることを強調した。
宗教法人法には、「報告徴収・質問権」が定められている。宗教団体が法令に違反し、公共の福祉を害したと疑われる場合、国は法人からの報告を求め、関係者に質問を行うことができるのだが、これまで行使されたことは一度もなかった。結果によっては、裁判所への解散命令請求につながる可能性もある。
「検討する」が口癖となっていた岸田首相がこのタイミングでにわかに強気の一手を打ち出したことについて、政府関係者はこう語る。
「政府内では元々、信教の自由を保障する観点から、解散命令請求などには文化庁を筆頭に慎重論が根強かった。首相も同調していたが、支持率低下に歯止めがかからない状況を受けて局面転換を図った形だ。衆参本会議での代表質問で手応えを感じられず、岸田首相なりの嗅覚が働き、相当踏み込んだ発言となった」
13日に発表された時事通信の10月の世論調査では、岸田内閣の支持率は前月の同調査より4.9ポイント減の27.4%。政権維持の「危険水域」とされる20%台に落ち込んだ。旧統一教会の問題をこれ以上放置すれば、政権の命取りになりかねない。
これより前の10月7日、衆参本会議での代表質問を終え、官邸の執務室で滝沢裕昭内閣情報官から旧統一教会と自民党の関係についての現況報告を受けた岸田首相は「こんなに浸透しているとは思わなかった……」と絶句したという。