北海道新幹線の札幌延伸の陰で、貨物の大動脈である並行在来線が廃線になる可能性が高まっている。北海道発の物流危機は回避できるのか。AERA2022年10月31日号の記事を紹介する。
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フォークリフトがコンテナを持ち上げ、停車中の貨物列車につみこんでいく。札幌市内のJR貨物の札幌貨物ターミナル駅には毎日、本州との間で約40本の貨物列車が発着する。1日平均6464トンのコンテナ輸送量は東京貨物ターミナル駅につぎ、全国2番目に多い。
貨物列車はペットボトルや宅配便、書籍など道民の生活に欠かせない物資を運んでくる一方、道内から集まるタマネギやジャガイモ、食料工業品を本州に向けて送り出している。
札幌ドーム10個分に相当するこの広大な物流拠点が「無用の長物」になるかもしれない。
■バス転換やむなし
札幌発着の貨物列車は、北海道の「玄関口」である道南のJR函館線を通り、本州との間を行き来する。要所である函館-長万部間の路線が、廃線の瀬戸際に立たされているのだ。
物流の大動脈が危機に直面するのは、貨物が走る旅客線の存廃問題がからんでいる。
2016年に新函館北斗-新青森間で開業した北海道新幹線は、30年度末に札幌まで延びる予定だ。延伸区間と並行して走る函館線は、函館-小樽間約288キロがJR北海道から分離され、存続するか廃止するかは北海道と沿線市町の協議にゆだねられている。
地元の話し合いは10年に及び、今年3月、長万部-小樽間約140キロの廃線・バス転換が固まった。残る函館-長万部間約148キロは8月31日、沿線7市町による協議が約1年4カ月ぶりに再開された。