ナラ枯れの被害が目立つ(トトロの森の6号地、トトロのふるさと基金提供)
ナラ枯れの被害が目立つ(トトロの森の6号地、トトロのふるさと基金提供)

 宮崎駿監督の映画『となりのトトロ』で知られる「トトロの森」(埼玉県所沢市)で異変が起きている。青々と茂っているはずの森の木々が「ナラ枯れ」という伝染病にかかり、集団で枯れてしまっているというのだ。

【この記事の写真の続きはこちら】

 西武狭山線西武球場前駅から徒歩で約10分。

 トトロの森3号地へ行ってみると、案内図の横の木に「ナラ枯れ防除対策実施中」のビラが貼られ、「倒木・落枝にご注意ください」と、ジブリ映画の聖地を訪れる訪問者に注意を促していた。森の奥には木の幹に黄色いテープが巻かれ、感染していることを示す木が何本も見えた。見上げると、それらの木々の葉は茶色く枯れてしまっている。

ナラ枯れを引き起こすカシノナガキクイムシのオスの成虫(神奈川県自然環境保全センター提供)
ナラ枯れを引き起こすカシノナガキクイムシのオスの成虫(神奈川県自然環境保全センター提供)

 ナラ枯れは「カシノナガキクイムシ」という体長5ミリほどの虫が樹木に穴をあけて入り込み、繁殖することで「ナラ菌(カビの一種)」に感染し、樹木が水分を吸い上げる機能を失うことで起きる。

 木が枯れると、繁殖した新世代のカシノナガキクイムシは別の木を求め飛び立っていくため、被害が広がってしまう。彼らが狙うのはナラ、シイ、カシなどドングリを実らせるブナ科の樹木だ。

 広さ約3万3000坪のトトロの森を管理している公益財団法人「トトロのふるさと基金」によると、2019年10月に初めて確認されて以降、20年には61本、21年には273本、今年は10月までに453本の木がナラ枯れに感染しているか、枯死してしまっています」という。

 トトロの森の周囲にはたくさんの自然林があるが、西武球場前駅周辺では、緑が生い茂る木々の中に、季節外れに葉を茶色くしている木々が多数見られた。

 実はここ数年、ナラ枯れ被害は拡大中だ。

 18年度には全国での被害樹木の総体積は4.5万立方メートルだったが、19年度には6万立方メートル、20年度には19.2万立方メートルに増えた。21年度も15.3万立方メートルあり、42都府県に被害が拡大している。

次のページ
対策にマンパワーが足りない