
日本、北米、欧州の3地域対抗団体戦・ジャパンオープンで日本が優勝した。男子シングルでは世界王者と新星の初対決に注目が集まった。AERA 2022年10月24日号の記事を紹介する。
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2026年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪への新たな4年がスタートした。男子は羽生結弦のプロ転向、北京五輪金メダリストのネーサン・チェン(23、米国)の休養とトップスターが不在のなか、そんな心配を吹き飛ばすかのように新星が誕生した。自称「4回転の神」のイリア・マリニン(17、米国)。9月の今季初戦・USインターナショナルクラシックで4回転半(クワッドアクセル)を史上初めて成功させ、新時代の開拓者たる風格を漂わせている。
■4回転6種類を7本
そのマリニンが10月8日のジャパンオープン(さいたまスーパーアリーナ)で来日。22年世界選手権覇者の宇野昌磨(24)も、マリニンと同じ17歳の三浦佳生(かお)も、ライバル心が刺激される一戦となった。
先手を打ったのはマリニンだ。7日の公式練習の曲かけで「4回転6種類7本」という前人未到のジャンプ構成をやってのけた。4回転半は誰もが注目していたが、期待の上をいく全6種類の4回転である。試合に向けて申告していた予定は「4回転4種類5本」であったため、そんな破格のジャンプ構成に挑戦し、しかもすべて降りるというのは誰も予想していなかった。
思わずマリニンに直接聞いたのは、三浦だった。

「わけが分からなかったです。全部が4回転ジャンプ? 本人に聞いたら、初めて七つの4回転を入れて降りたと言われて、さらに『ええっ』って。格の差を見せられて、負けたくないというよりもあきれる感じです」
■焦るどころかうれしい
一方の宇野は、焦るどころかうれしそうにしていた。世界王者として初めて追われる立場で臨むシーズンになるはずだったが、気持ちが一転したのだ。
「(王者となって)環境が変わり、自分ができないことを淡々とやろうという日々でした。そのなかでマリニン選手を見て、再びこうやって(ライバルが)現れるんだなって思いました。マリニン選手のほうがジャンプも安定してクオリティーも高い。今季自分がなにを目指すべきか、そこに目標があったみたいでうれしかったです」