岸田文雄首相が突如打ち出した「異次元の少子化対策」。昨年の全国の年間出生数が初めて80万人を割り込むという危機的見通しのなか対策は必須だが、気になるのは財源。岸田官邸が描く答えはずばり「消費税増税」だ。現状をリポートする。
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「異次元の少子化対策に挑戦する。そんな年にしたい」
岸田首相は1月4日、伊勢神宮(三重県伊勢市)で行った年頭記者会見で、こうぶち上げた。「異次元」という表現も大仰だが、その中身も、「6月の『骨太の方針』までに将来的な子ども予算倍増に向けた大枠を提示する」という壮大なものだった。
「年頭会見はその年の最も重要な政策課題を示す場。少子化対策は今年前半最大の課題に位置付けられたと言ってもいい」(首相周辺)
岸田首相の号令を受け、1月19日には関係府省会議(座長・小倉将信こども政策相)の初会合が開かれた。今後、児童手当や保育サービスの充実などの具体的な政策を検討し、骨太の方針に盛り込むことを目指す。
それにしても、昨年決めた防衛予算倍増の財源について激論になっているさなかに、さらに子ども予算までをも倍増するというこの流れ。岸田首相はよほど「倍」が好きなのかもしれないが、本当に実現できるのか。政府関係者はこう語る。
「異次元の少子化対策なんて突然出てきた話で、自民党議員も“寝耳に水”という反応が多かった。振り付け役は財務省で、ずばり、将来的な消費税増税の布石と言っていいだろう。岸田首相にしたら、防衛増税で政権への逆風が強まったこともあって耳触りのいい少子化対策を前面に打ち出して雰囲気を変えたかったんだろうが、結局、また増税の話になってしまう。4月の統一地方選までは財源論議は封印せざるを得ないから、政権はますます追い込まれる。財務省は自分たちのやりたい政策を全部、岸田首相にやらせて、最後は“捨て駒”にするつもりだ」
すでに、増税の足音は聞こえてきている。岸田首相の年頭会見に呼応するように、自民党税調幹部の甘利明前幹事長が5日のテレビ番組で少子化対策の財源について「将来の消費税(増税)も含めて、地に足をつけた議論をしなければならない」と発言。松野博一官房長官は翌6日の会見で「(消費税の税率に)当面触れることは考えていない」と打ち消したが、据え置きはあくまで「当面」。財務省関係者によると、省内では近い将来の「消費税12%」はすでに視野に入っているという。