菅義偉前首相
菅義偉前首相

 経済官庁の副大臣を経験した自民党議員が語る。

「財務省としては少子化や日本経済の低迷などにより今後、財政状況が最悪になるのを見越して10年、20年スパンの財政計画を立てる。このままでは消費税増税やむなしという前提でやらざるを得ない。防衛費も今後、増えていくなか、少子化対策も効果が出ず空振りに終われば、長期的には消費税20%台も現実味を帯びてくるだろう」

 ただ、消費税増税は、これまで首相が増税発言に絡んで辞任に追い込まれたケースもあり、政権にとっては「タブー中のタブー」だ。このため、政界では「岸田政権では無理。せいぜい、岸田首相在任時は『芽出し』をするぐらい」(政界関係者)との見方もある。

■首相批判の菅氏 他派とも連携か

 岸田首相自身、21年の総裁選で「10年程度は(消費税率を)上げることを考えていない」と明言しており、財務省内でも、「19年に10%に引き上げたばかりで、さすがに早期の消費税増税は無理だろう」との観測だという。

 岸田首相は昨年末に出演したテレビ番組で、倍増する防衛費の財源確保のための増税を実施するまでに衆院解散・総選挙を行う考えを示した。ところが、年頭の会見では「日程上、可能性の問題としてありうると申し上げた」とトーンダウン。増税をかけて解散に打って出るほどのエネルギーは感じられない。

 自民党安倍派中堅は政権の厳しい現状を語る。

「岸田首相は『選挙』をちらつかせて党内へのけん制、求心力アップを図ったんだろうが、実態は支持率30%前後で全然上がらないし、年明けにG7各国を外遊した効果もなかった。首相一人がギアを上げたところで、解散戦略は描けない」

 生煮えで投げ込まれた「異次元の少子化対策」は、政局の引き金になりかねない。年明けから「反岸田」のキーマンに躍り出たのが菅義偉前首相だ。

 菅氏は訪問先のベトナムで10日、記者団に対し、「国民の声が政治に届きにくくなっており、懸念を感じている」と岸田首相を公然と批判。さらに、首相就任後は派閥を離脱するのが慣例なのに岸田派にとどまっているとして「派閥政治を引きずっていると見られる。国民の見る目は厳しくなる」と語った。

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