柄本 明(えもと・あきら)/ 1948年生まれ。東京都出身。76年、劇団東京乾電池を結成し、座長を務める。93年「空がこんなに青いわけがない」で映画監督デビュー。98年「カンゾー先生」で第22回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。10月クールのドラマ「ジャパニーズスタイル」に出演。公開待機作に、「ある男」(11月18日公開予定)、「シャイロックの子供たち」(2023年2月17日公開予定)がある。
柄本 明(えもと・あきら)/ 1948年生まれ。東京都出身。76年、劇団東京乾電池を結成し、座長を務める。93年「空がこんなに青いわけがない」で映画監督デビュー。98年「カンゾー先生」で第22回日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞。10月クールのドラマ「ジャパニーズスタイル」に出演。公開待機作に、「ある男」(11月18日公開予定)、「シャイロックの子供たち」(2023年2月17日公開予定)がある。
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 約束の時間よりも10分ほど早く、柄本明さんがインタビュールームに入ってきた。手には朝刊と、水の入ったペットボトル。「ちょっとすいませんね」と言いながら椅子に腰かけ、慣れた手つきでペットボトルに青汁のパウダーを入れ、軽く振ってから、3分の1ぐらいの量を一気に飲んだ。

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 インタビューの冒頭で、柄本さんがホームレス役で出演した映画「夜明けまでバス停で」の感想を伝えると、「俺、観てないんですよ。インタビューだから、観たっていう前提で話さないとまずいのかな」と言って、ポリポリと頭を掻いた。

「夜明けまでバス停で」は、高橋伴明監督が、非正規雇用やコロナ禍での不安定な就労状況によって、ホームレスになってしまった女性の“社会的孤立”を描いた問題作だ。一昨年の冬、東京・幡ケ谷のバス停で寝泊まりしていたホームレスの女性が襲われて死亡した事件をモチーフにしたこの作品で、柄本さんは、突然のコロナ禍によって仕事と家を失いホームレスに転落してしまう主人公が唯一弱音を吐ける、古参のホームレスを演じた。

「我々の間では、伴明監督のことは“ぼん”って呼んでるんです。最初に会ったのは、たぶんぼんがピンク映画をバンバン撮っているときで、こっちは小劇場で、アングラ演劇をやっていた時代。映画とか芝居とか本とか好きな連中が、当時は、新宿のゴールデン街あたりに集まっていて、自然と知り合っちゃった」

 一緒に仕事をすることになったのは1984年。赤川次郎さん原作の「探偵物語」が渡辺典子さん主演でドラマ化されることになった。柄本さんが演じたのは、主人公の相棒の探偵役。そのドラマの監督が伴明さんだった。

「当時は、撮影が終わると、毎晩必ず飲みに行ってたんですよ。飲んでいるとだんだん目が据わって、僕なんかに絡んでくるんですよ。若い頃の武勇伝も聞いてたから、みんなで『ダメだよ。明日も撮影があるんだから』ってなだめると、ぼんが、『わかってるよ、バカヤロー!』みたいな(笑)。以来、一緒に仕事はしてないんじゃないかな。でも、好きな監督なんでね。今回は、久しぶりにやらせてもらったんですけど、現場ではどこかでお互いに、ちょっと照れみたいなものがある感じがしました。もちろん一生懸命やってるんですよ。でもなんかね」

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