しらふの方が楽しい
話を聞いた20人ほどの若者のほとんどは、酒の好き嫌いを問わず、「飲みたい人だけ飲めばいい」「国が推奨したところで変わらない」と口をそろえた。
「生活のなかで、お酒の優先度はめちゃくちゃ低い」
そう話すのは、都内の男性会社員(23)だ。同僚や友人と居酒屋に行くことはあるが、一人で飲むことはほとんどない。飲まなくなったきっかけは、オンラインゲームだった。
「休みの日や夜はオンラインで対戦することが多くて、酔っ払うと負けちゃうんですよ。自分はしらふの方が楽しい」
「酒離れ」の定義に疑問を持つ声もある。会社員の「聖地」・新橋の飲み屋街近くの小さな公園で、ベンチに座る男女の手には缶チューハイが握られていた。二人は20代前半で、同じ会社の同期。月に2~3回、こうして飲んでいるという。
近くには居酒屋もあるが、彼らにとってはコンビニが“飲み屋”だ。「店に入るとお金がかかるけど、ここなら数百円でいい」
そう言って、うなずき合う。
「お酒は好きだから、『酒離れ』とは思いません。でも、酔っ払うほどは飲まないし、週3日以上と言われるとそこまででもない。酒離れと言いすぎるから、余計に離れてしまうのではとも思います」(男性)
この日も1時間ほどで切り上げ、家に帰るつもりだという。
あの手この手を使って、若者と酒の接点を作ろうとする国。だが、酒との距離感について、当事者たちはいたって冷静なのだ。(編集部・福井しほ)
※AERA 2022年9月26日号