国税庁のキャンペーン「サケビバ!」が、飲酒推奨、税収狙いと批判を呼んでいる。当の若者たちはどうとらえているのか。AERA 2022年9月12日号から。
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飲めるけど、飲まない。そんな人を「ソバーキュリアス」と呼ぶらしい。英語のsober(しらふ)とcurious(好奇心が強い)を組み合わせた言葉で、2~3年ほど前からSNSで見かけるようになった。とりわけ、若い世代で広まっているという。
「若者の酒離れ」は数字にも表れている。国税庁によると、週3日以上酒を飲む人の割合は、50代男性52.3%に対し、20代は14.5%。女性はより顕著で、50代22.5%に対し、20代はわずか6.5%。コロナ禍の緊急事態宣言やまん延防止等重点措置で、飲食店での飲酒が制限されたことも流れを加速させた。
国が若者の需要を喚起
そんななか、国税庁が立ち上げたのが「サケビバ!」というキャンペーンだ。「若年層へ日本産酒類の発展・振興に向けた訴求」を掲げ、20~39歳の“若者”を対象にアルコール消費を推奨するアイデアを募集する。酒類業界の活性化を図るというが、違った思惑が透けて見えると受け手の視線は冷ややかだ。
<日本の若者よ、もっと酒を飲もう 国が税収増狙い奨励>
こんなタイトルの記事がBBCで報じられると、世間でも批判が殺到。「アルコール依存症が問題になるなか国が飲酒をすすめるなんて」「飲むなと言ったり、飲めと言ったりどっちだ」などの意見があふれた。
当事者の若者は「サケビバ!」について、どう思っているのか。
「国が推奨するのはやめてほしい」
そう話すのは、20代の女性。もともとアルコールに弱く、この数年はほとんど飲んでいない。当初は後ろめたさがあったが、ノンアルでも飲み会を楽しめた経験が増えたり、EXITの兼近大樹さんが酒を飲まないと公言する姿を見たりして、自信を持てるようになった。いまさら国が需要喚起すればアルコールハラスメントが発生するのではないか、と懸念する。
「お酒が好きで楽しめる人は飲めばいい。でも、飲酒を推奨するなら、アルハラや依存症の対策も一緒に強化してほしい」