銭湯の常連さんから、ゴーヤカーテンで採れすぎたゴーヤのお裾分けを頂きました(photo 本人提供)
銭湯の常連さんから、ゴーヤカーテンで採れすぎたゴーヤのお裾分けを頂きました(photo 本人提供)

 思い返せば、私にとってこのアホのような対処法が我が人生に与えた影響は案外大きい。いやね、私だって最初からうまくいくと思って始めたわけではなく、きっかけは完全に忘れたがモノは試しとやってみたらあまりにパーフェクトにうまくいったのでそのまま今に至る。全く世の中の常識ってものは案外めちゃくちゃ狭い。この世はまだ未知の可能性に満ちていると思うだけで希望が湧く。

 そして、不快なことも気にしなければ「なかったこと」になると知ったこともデカかった。無論世の中にはしつこく気にしなきゃいけないこともある。でも自分を振り返れば、どうでもいい目先のことを気にしているうちに時間はどんどん浪費され、本当に気にしなきゃいけないことは後回しになってばかりであった。人生の時間は限られていることをひしひし感じる昨今、無駄な時間を削り取る方法を教えてくれた蚊に感謝である。

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

AERA 2022年9月19日号

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