1960年代にデビューして以来、『デザイナー』『プライド』『有閑倶楽部』など多数のヒット作を生み出してきた少女漫画界のレジェンド・一条ゆかり。彼女による大人向け辛口エッセイ集『不倫、それは峠の茶屋に似ている たるんだ心に一喝!! 一条ゆかりの金言集』が出版されました。
その作風からか、はたまたキャラクターからか、一条さんは人から相談されることが非常に多いといいます。彼女が人の悩みを聞いていていつも感じるのは、悩みの大半は本人に責任があるのに「私は悪くない」「私はかわいそう」と思っている人が多いことだそうです。本当に幸せになりたいと思うのなら、「相手のせいにするのでなく、まずは『私がへんなことしてないかしら!?』と我が身を振り返るようにしないとダメ」(同書より)だと一条さんは言います。アイタタタ......と耳が痛い人もいるかもしれませんが、そのぶん同書からは多くの気づきや学びが得られるはずです。
そもそもタイトルからして少々刺激的。これも同書に登場する一条さんの金言のひとつ。「不倫、それは峠の茶屋に似ている。お団子を食べたら、まだ明るいうちに出発しないと迷子になります」というものです。
「不倫」の場合、仮に独身女性と既婚男性の恋ならば、あくまでも妻がいる男性をちょっと借りているだけで、シミをつけたり汚したりしないのが大人のマナー、つきあいが長くなり深みにはまる前に引きあげるのが"正しい不倫のやり方"だと一条さんは持論を述べます。
これにはもちろん賛否両論あるとは思いますが、不倫を頭ごなしに否定するのではなく、「とにかく夜の峠はオオカミも出るし、迷子になると怖いので、茶屋でひと休みしたら、明るいうちに出発しましょう!!」(同書より)と茶目っ気も混ぜてアドバイスするところが、さすが酸いも甘いも噛み分けた一条さんならではです。
他にも同書には、「時に『見栄』は原動力になる」「人生のシミュレーションをする時は、自分の欲や欠点から目をそらすな!」「鯛を釣りたいなら、最低限、自分が海老になる必要がある」「そのままのキミはたいてい汚い。入口が汚いと誰もノックしてくれません」など、仕事や恋愛、美容、生き方に通じる86の金言が収録されています。
さらに、一条さんが特別に描き下ろしたショート漫画「その後の有閑倶楽部」が掲載されているのも同書の大きな魅力。剣菱悠理や白鹿野梨子、菊正宗清四郎といったおなじみのメンバーが大人になった姿が、一条さんの考察とともに描かれていて、ファンにとってはそれだけでも読む価値があることでしょう。
顔には出さずとも、心に悩みや葛藤を抱えている人は多いもの。いっときの慰めはいらない、スパッと鋭く世の中の真理を突く言葉がほしいと思う人にとって、同書は前を向いて進む勇気をもらえる一冊になるはずです。
[文・鷺ノ宮やよい]