「魂のピアニスト」と評され、コロナ禍でも世界中を飛び回って活躍するフジコ・ヘミングさん。演奏や私生活で大切にしていることとは。
インタビューは、フジコさんの下北沢の自宅で行われたが、「毎日の練習時間はどのくらいですか?」と質問したとき、「最近、体が弱ってきたのを感じますから、あんまり練習しないようにしています。そのほうが、次のコンサートの本番で調子がいいって気がついたから」と話していた。ところが、写真撮影になっていざピアノの前に座ると、次々に曲を弾き始めるのだ。部屋にいる猫たちも、うっとりと目を閉じて、フジコさんのピアノを聴いている。
「動物は、子どもの頃から好きね。私のひいおじいさんが、スウェーデンで、犬猫病院の先生をしていたそうで、うちではみんな、犬とか猫が好き。何なら、ゴキブリも飼ってますよ(笑)。お風呂場にゴキブリがいると、水とパンをあげて。そしたら、パンに覆いかぶさって食べてましたよ。友達のお医者さんに聞いたら、ゴキブリって、あんなに嫌われているけど、人間には何にも害がないんですって。気持ち悪いだけだって。それに、2週間しか生きないっていうし、私は一度、「ねんねこしゃっしゃりま~せ」って、子守歌を歌ってあげたこともあるんです。そうしたら、歌っている間はうれしそうに髭(ひげ)を動かして、歌うのをやめたら、髭のピクピクが止まってました(笑)。小林一茶の俳句なんか見ると、小さなものにも愛情があったでしょ。私は、ああいう人が好き」