■「決めつけ」は負担

 もちろん、両親の側にも言い分はあるだろう。この女性の例ではないが、孫の育児に参加している祖父母からは「手伝っているのに文句ばかり言われる」「同居していない祖父母に責任を求めすぎ」「感謝の言葉がない」などの不満が聞かれた。

 祖父母の子育て参加、いわゆる「孫育て」が注目されて久しい。政府や自治体は、少子化対策・子育て支援の観点から祖父母の育児参加を推進している。少子化社会対策大綱では、2015年に世代間の助け合いを目的とした「3世代同居・近居の促進」が盛り込まれ、20年版でも「多様化する子育て家庭の様々なニーズに応える」ための重点課題として踏襲された。

 家族・親子関係の研究を続ける恵泉女学園大学の大日向雅美学長(発達心理学)はこう話す。

「子育ては家族間だけでなく社会全体で取り組むべき課題ですし、祖父母に頼れるかは個人差が大きく、社会のトレンドとして祖父母の子育て参加を強調しすぎるのは疑問。それでも、頼れる状況にあるならばパパ・ママにとって祖父母は強力なヘルパーであることは間違いないし、祖父母にとっても孫と過ごすのは至福の時間でしょう。一方でデメリットもあって、それを理解しなければすれ違いが起こってしまうこともよくあります」

 特に祖父母世代にとって負担なのが、「孫はかわいいはず」「子育てに参加できてうれしいはず」という両親世代の決めつけや思い込みだという。

「祖父母には祖父母の人生設計があり、体力や時間、お金をどれだけ孫のために使えるかは人それぞれ。孫の面倒を見るのはパパ・ママが思う以上に大変です。『孫育ては責任がないから無条件にかわいがれる』なんていいますが、あれはウソ。万一にも孫にけがをさせるわけにはいかないと思いつめるなど、孫を預かるプレッシャーや負担はとても大きいんです」

■祖父母は4、5番目

 一方の両親にとっても、祖父母に頼りすぎることで必要以上の介入を招いたり、夫婦で試行錯誤しながら子育てしていく「家族の成熟」のチャンスが奪われたりする可能性がある。

 大日向学長は祖父母と両親の距離感として、「祖父母は4から5番目くらいの頼り手にするべき」とアドバイスする。

次のページ