■取り巻きも大きな打撃
顧客の秘密を固く守ることで知られるスイスの銀行業界も、今回ばかりは制裁に協力している。ロイター通信によると、約75億スイスフラン(約1兆円)に相当するロシア関連資産が凍結されたという。大統領の取り巻きにも、大きな打撃を与えたことだろう。
ロシアは強く反発。3月に発表した敵対国リストに、日米など主要7カ国(G7)やEU加盟国と並んでスイスも加えた。
敵対国の時計を身につけていては示しがつかない。それが、プーチン氏が愛用の腕時計を外した理由だろう。
もちろん、腕時計は一つの象徴にすぎない。ロシアから撤退したマクドナルドに代わるハンバーガーチェーンを立ち上げたように、ロシアは今、あらゆる国外製品を国産品に置き換える運動を進めている。
ウクライナでの戦闘は長期化が避けられない。さらに今後、停戦したとしても、欧米との関係は以前と同じように戻ることはないという判断が、国産品重視の背景にはある。(朝日新聞論説委員、元モスクワ支局長・駒木明義)
※AERA 2022年8月29日号より抜粋