(AERA2022年8月29日号より)
(AERA2022年8月29日号より)

■取り巻きも大きな打撃

 顧客の秘密を固く守ることで知られるスイスの銀行業界も、今回ばかりは制裁に協力している。ロイター通信によると、約75億スイスフラン(約1兆円)に相当するロシア関連資産が凍結されたという。大統領の取り巻きにも、大きな打撃を与えたことだろう。

 ロシアは強く反発。3月に発表した敵対国リストに、日米など主要7カ国(G7)やEU加盟国と並んでスイスも加えた。

 敵対国の時計を身につけていては示しがつかない。それが、プーチン氏が愛用の腕時計を外した理由だろう。

 もちろん、腕時計は一つの象徴にすぎない。ロシアから撤退したマクドナルドに代わるハンバーガーチェーンを立ち上げたように、ロシアは今、あらゆる国外製品を国産品に置き換える運動を進めている。

 ウクライナでの戦闘は長期化が避けられない。さらに今後、停戦したとしても、欧米との関係は以前と同じように戻ることはないという判断が、国産品重視の背景にはある。(朝日新聞論説委員、元モスクワ支局長・駒木明義)

AERA 2022年8月29日号より抜粋

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駒木明義

駒木明義

2005~08年、13~17年にモスクワ特派員。90年入社。和歌山支局、長野支局、政治部、国際報道部などで勤務。日本では主に外交政策などを取材してきました。 著書「安倍vs.プーチン 日ロ交渉はなぜ行き詰まったのか」(筑摩選書)。共著に「プーチンの実像」(朝日文庫)、「検証 日露首脳交渉」(岩波書店)

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