2008年6月8日事件当日18時頃の現場付近。報道陣が集まるなか、何が起こったか知らない通行人も多かった(photo/インベカヲリ★)
2008年6月8日事件当日18時頃の現場付近。報道陣が集まるなか、何が起こったか知らない通行人も多かった(photo/インベカヲリ★)

 当時22歳だった小島は、1人を殺害、2人に重軽傷を負わせた。動機について「一生刑務所で暮らしたい」と述べ、無期懲役囚になるためだったという。裁判でも「刑務所に入りたい」の一辺倒だった。しかし、3年弱の取材を通してわかったことは、刑務所という場所に「親代わり」を求めているということ。それも、かなり倒錯した「理想の家庭」像を持っていることがわかった。そうした生々しい心理は、何度も面会に行って話を聞き、関係性をつくって初めて見えてくることだった。

 この事件についてまとめた『家族不適応殺 新幹線無差別殺傷犯、小島一朗の実像』を出版した後、「死刑になりたい」という犯行動機の無差別刺傷事件が未遂を含め立て続けに起きた。21年10月には、京王線の車内で、映画「ジョーカー」の主人公のコスプレをした服部恭太がサバイバルナイフで1人に重傷を負わせ、車内を放火し「2人以上殺して死刑になりたかった」と供述。11月には「小さな子どもを殺して捕まり、死刑になりたかった」と、包丁を持った男が宮城県内にあるこども園に侵入した。22年1月には、東京・代々木の焼き肉店に、刃物を持った荒木秋冬が店長を人質に立てこもり、「その場で射殺されたかった」「死刑にしてくれ」などと供述した。ほかにも、同様の事件が複数件起きている。(写真家・ノンフィクションライター・インベカヲリ★)

AERA 2022年8月29日号

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