<ライブレポート>ハリー・スタイルズ、感謝と愛の気持ちで溢れた来日公演で18曲も披露
<ライブレポート>ハリー・スタイルズ、感謝と愛の気持ちで溢れた来日公演で18曲も披露

 2022年5月にリリースしたアルバム『ハリーズ・ハウス』が【第65回グラミー賞】で<最優秀アルバム賞>に輝いたハリー・スタイルズが、2018年5月の単独公演以来となる来日公演【Love On Tour 2023】を3月24日・25日に東京・有明アリーナで開催した。アジアツアー最終地で計24,000人動員(両日ソールドアウト)という、不動の人気ぶりを証明した最終日の模様をお伝えする。

 2011年にワン・ダイレクションのメンバーとしてデビューし、21世紀最大のボーイズグループとして世界中を熱狂させたハリーは、2017年に始めたソロ作品がどれも商業・評価的に成功を収めている。特に『ハリーズ・ハウス』は人と触れ合うこと、自己を見つめることで生まれた楽曲が揃い、ボーイズグループ出身アイドルというアーティスト像を打ち破った。

 そんな傑作が生まれる前の2018年年末、そして2020~2021年のどこかで来日をしていたというハリーの久々の来日公演の開場中に、はっぴいえんど「風をあつめて」や細野晴臣「僕は一寸」といった、『ハリーズ・ハウス』に影響を与えたであろう日本のレジェンドの楽曲が流れるところから、彼の変わらぬ日本愛が感じられた(終演後、一番に流れたのは久石譲「風のとおり道」だった)。老若男女が口ずさめるクイーンの名曲「ボヘミアン・ラプソディ」でオーディエンスの喉は温まり、これから運ばれる音楽のフルコースを楽しむ準備が整った。

 スターターは【グラミー】受賞アルバムのスタートナンバー「ミュージック・フォー・ア・スシ・レストラン」。軽快なイントロが流れた瞬間から会場は歓喜に満ち、キラキラ輝くスパンコールのスーツに身を包んだスーパースターがスキップしながら登場すると、高ぶりは頂点に。<You know I love you, babe!>とハリーがシャウトするたびに、ピンクやビビッドカラーのコスチュームが目立った会場からは叫びに近い歓声が沸き上がる。

 流れるように前作『ファイン・ライン』のスタートナンバー「ゴールデン」が続き、夕陽色のライティングとギターを手にしたハリーの温かい歌声が会場を包み込んで、歌詞通り眩しすぎるほどうっとりとする時間が流れた(パーカッション担当のポーリー・ラヴジョイが終始大きくリズムを取る姿も愛らしかった)。「ただいま日本!」と挨拶し、これまたロマンティックなラブソング「アドア・ユー」では後半のハリーの力がこもった歌唱に痺れる。誰かを愛することは素敵なことで、それが彼の人生をカラフルにしていることが、この3曲からヒシヒシと伝わってきた。センターロードを歩く間、ずっと「アリガトウゴザイマス」と口にし、「大丈夫?」「楽しんでる?」とファンに目を配るところもまた彼らしい。ワン・ダイレクションとしてデビューしてからかれこれ12年。ずっとスター街道を歩いてきた彼だが、周囲を気遣うキャラクターは全く変わっていない。

 「(日本語で)はじめまして、ハリーです。みんなに会えて嬉しいです。(英語で)貴重な時間を僕のために使ってくれてありがとうございます。みんなが楽しい時間を過ごせるよう、最大限努力することを誓います。歌って踊って、とにかく自分がしたいことを思う存分やってください。ここでは自分らしさを最優先していいんですからね」と、このパーティーのルールを説明。ここはハリーの家であり、家の主が「何をしてもOK」と言うのだ。

 「準備はいいですか? ガンバリマース!」と、ハリーの代名詞がついに聞けたところで、「キープ・ドライヴィング」へ。緑が豊かな田舎町やロンドン市内を車で走り、幸運の象徴である青い鳥とともにニューヨークに移動した「デイライト」、そして「ウーマン」では昨年の【コーチェラ】でも流れた桜が舞い落ちる東京・青山をゆっくり進むなど、世界各国を旅する映像とともに、私たちとなんら変わらないハリーの平穏な恋愛模様を体験することに。バンドメンバーたちの卓越したプレイも見ものだった。

 アリーナ中央に設けられたステージに移動したハリーは「10年以上も応援してくれて心から感謝しています。日本は僕にとって特別な場所で、次に披露する曲も僕にとって特別な一曲です」と、最新作の中でも特に人気が高い「マチルダ」を披露する。自分を傷つける人と無理して付き合わなくてもいいと優しく助言する曲で、ハリーがまるで自分の悩みに耳を傾けてくれる友達で、10年以上も雲の上の存在である彼をより一層身近に感じるオーディエンスも多いのではないか。

 「東京で書いた曲」と紹介した「リトル・フリーク」は遠い地にいる人を思う気持ち、そして、こちらも心と物理的な距離によって高まる気持ちを描いた「サテライト」(感情が爆発するように体を大きく揺らすハリーの姿が目に焼き付いている)でどこかセンチメンタルなムードに誘ったハリーだったが、この後は怒涛のディスコパーティーが待っていた。

 「(プライベートで)4年前に日本に来たとき、5日間の滞在のつもりが6週間に伸びました。すごく居心地が良くて。その間に、いろいろ考えたりたくさん曲を書いたりして、アルバム2作(『ファイン・ライン』と『ハリーズ・ハウス』)が完成しました。日本で過ごした時間がなければ、この作品も生まれることがなかったと思うと、皆さんには感謝の気持ちでいっぱいです」とひっきりなしにお礼をするハリー。日本に住んでいる者には気づかない日本のすばらしさに感銘を受けた彼が、そこで拾ったインスピレーションをもとに作り上げたアルバムが多くの人に愛され、この地に愛を還元しに来てくれたのだ。

 「ラーメンを食べに一蘭に行ってください」というファンのサインボードを見つけたハリーは「肉なしにできるのかな。(ここから全て日本語で)ネギ味噌ラーメン、肉なし、麺半分お願いします、ひとつ。あとチャーハン、肉なしお願いします。あと、3つメンマお願いします。あと3つハイボール。あと、ひとつおにぎり。いくらおにぎり。あと~(ファンからギョーザと言われ)ギョーザ、肉なしお願いします! あと~、超かわいい」と自慢の日本語で会場を笑顔にした。

 「ここから本気のダンスセッションに突入します。ガンバリマース!!」と気合を入れて、黄金時代のハリウッドのような演出の「シネマ」ではスポットライトがいくつも放たれた。自身のモットーである“他人に優しく”を歌う「トリート・ピープル・ウィズ・カインドネス」、1Dデビュー曲「ホワット・メイクス・ユー・ビューティフル」までノンストップで、ハリーもバンドメンバーもオーディエンスも、パーティーの参加者全員が体を揺らして、心も表情もハッピーだ。最後はWBC優勝を祝うかのようにハリーが会場後ろへとホームランを打った。

 火照った体を冷ますべく、「水お願いします。ごちそうさまでした」と流ちょうな日本語を披露し、世界各国を一緒にまわってきた大切なバンドメンバーそしてクルーたちに拍手を送る場面を作る。シンガロングが起こった「レイト・ナイト・トーキング」では、ステージに投げられた『ちいかわ』のハチワレ帽をかぶるという予想外のコラボが見られ、ロマンティックなナンバーにキュートすぎるハリーがプラスされた。自身初の米ビルボードNo.1ソング「ウォーターメロン・シュガー」で再びハイライトを作ると、ハリーのホームであるイギリスに捧げた「ラヴ・オブ・マイ・ライフ」で本編はクローズ。「またね!」という言葉とともにステージを後にしたハリーをすぐさま“ハリー”コールが追いかけた。

 ピアノ伴奏とともにソロデビュー曲「サイン・オブ・ザ・タイムズ」でアンコールが幕開け。現在も続くウクライナ情勢の早い終末を願って【コーチェラ】でクロージング・ナンバーとして歌われて以来、この曲にはリリース時とは違う印象がある。人生のタイムリミットは選べないこと、そしてその時が来たときに後悔がないように今を大切に生きることを、内面もヴォーカルスキルも幾分と成長したハリーが噛みしめるかのように歌う姿が忘れられない。

 「日本にいつか住みたいです」というファンにはたまらない言葉を口にしたハリーは「(デビューしてから)1年、5年、12年と変わらない愛をくれて、僕の人生を変えてくれて、本当にありがとうございます」と、端から端まで、一人一人に再び感謝の言葉を送り、オーディエンスも拍手やホイッスル、歓声を送り返す。

 「また早く会いましょう。(日本語で)気を付けて帰ってください。ガンバリマース!!!」に続いたのは、待ちに待った「アズ・イット・ワズ」。<Come on, Harry. We wanna say good night to you!>という少女の声とメロディアスなシンセが鳴り響くと、会場の高まりは大爆発。キャリア最大のヒット曲に合わせて、大声で歌い、踊りくるう観客が続出し、筆者も体を揺らさずにはいられなかった。ステージから見える景色が気に入ったのだろうか、ハリーもたくさんジャンプして踊り、「バダダダッダ」と口ずさむシーンまで見られた。「アリガトウゴザイマス。ニホンダイスキー!」と何度もお辞儀と投げキッスをするハリーにこちらもたくさんの愛を送った。

 ここで終わりかと思いきや、右手を腰に、左腕を上げて、ハリーはステージをぐるっと一周。そして「シーッ!」と観客を黙らせると、会場を左右に分けて歓声のボリュームをコントロール。ためにためて、再び「ガンバリマース!」と叫ぶと、ロックナンバー「キウイ」でパワフルな歌声を届ける。思えばスタートからずっとオーディエンスを盛り上げる楽曲が続いていたが、その美声とスタミナはとどまることを知らない。最後は口から水を吹き出すお馴染みのシーンで締め、最後まで最高潮を更新していった。1時間30分で18曲(&たくさんの日本語)も披露してくれたハリーがもてなしてくれた品は、どれも最高で、誰もがおなかいっぱいの大満足でハリーの家を出た。

Text by Mariko Ikitake
Photos by Lloyd Wakefield

◎セットリスト
【Harry Styles “Love On Tour 2023”】
1. Music For A Sushi Restaurant
2. Golden
3. Adore You
4. Keep Driving
5. Daylight
6. Woman
7. Matilda
8. Little Freak
9. Satellite
10. Cinema
11. Treat People With Kindness
12. What Makes You Beautiful (One Direction)
13. Late Night Talking
14. Watermelon Sugar
15. Love Of My Life
<アンコール>
1. Sign Of The Times
2. As It Was
3. Kiwi