■私たちは共に生きる

 差別やヘイトのない社会にするにはどうすればいいか。

 師岡弁護士は、民族や国籍などにかかわらず、全ての人が尊重されこの社会の構成員として認められる多民族多文化共生社会を目指す政策に転換することが重要だとして、こう話す。

「悪意を持って差別を繰り返し拡散するヘイトスピーチやヘイトクライムについては、緊急措置として刑事規制が不可欠ですが、それだけでは差別をなくすことはできません。教育、啓発、交流促進、格差是正措置など包括的な差別撤廃政策が必要です」

 崔さんは、この社会には差別があり、差別で傷つく人がいることを知ってほしいと訴える。

「同じ社会の構成員の一人として、差別をしないだけでなく、差別をなくすために何ができるのか考えてほしい。人を人と思わない差別や誹謗中傷で苦しむ人がいることを知ってほしい、自分事として考えてほしい」

 そして、こう続けた。

「私たちは共に生きているということを忘れないでほしいです」

(編集部・野村昌二)

AERA 2022年1月3日-1月10日合併号

著者プロフィールを見る
野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

野村昌二の記事一覧はこちら
暮らしとモノ班 for promotion
台風、南海トラフ地震、…ライフライン復旧まで備える非常食の売れ筋ランキング