「故事成語」など、普段使われる言葉には外国発祥のものがいくつもあります。その成り立ちとなるストーリーは実に味わい深いもの。言葉のうんちくを紹介します(朝日新聞出版『みんなの漢字』から)。

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■双璧(そうへき)
優秀な二人の息子が甲乙つけがたかった

「璧」を「壁」としてしまいがちです。「璧」は、輪の形をした宝玉で、「双璧」はもともと「一対の宝玉」という意味です。中国の南北朝時代に北魏(ほくぎ)という国があり、その官僚だった陸凱(りくがい)の二人の息子がとても優秀で、「双璧」と評されたという故事が歴史書の『北史』に記されています。そこから、甲乙つけがたい二つの物や人を「双璧」というようになったとされています。 

■間髪(かんはつ)を容れず
「かんぱつ」ではなく「かん、はつ」と区切る

中国の漢の時代に編纂された説話集『説苑(ぜいえん)』などにある「間に髪を容れず」に由来する言葉です。もともとは「間に一本の髪の毛をいれる隙間もない」という意味で、そこから「事が切迫していて少しのゆとりもない」、さらには「即座に、とっさに」などの意味に転じました。「間、髪」と区切るのが本来の読み方ですが、「間髪」という熟語と誤解され、「かんぱつ」と読まれることが多くなっています。また「容れず」も「入れず」と間違えがちです。

■一炊(いっすい)の夢
飯が炊ける間の短い時間に見た夢

「夢」に続くので、「一炊」ではなく「一眠り」を意味する「一睡」と勘違いされがちです。この言葉は、中国で唐の時代につくられた『枕中記(ちんちゅうき)』という小説が元になっています。盧生(ろせい)という青年が茶店で昼寝をしたときに、一生涯の栄華を夢に見たものの、目覚めると寝る前に注文した粥が炊きあがっていないほど短い時間だったというものです。この話から、人生の栄華ははかないものであることを「一炊の夢」というようになりました。一眠りの間の夢ではなく、飯が炊ける間の夢ということです。

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「白い眼で見る」の人は青い眼ももっていた?