この結果、1億2千万人が生活不能に陥る。つまり、被災したのちに亡くなると見られる。復旧や救援が絶望的な状態で、ほとんどが餓死するというシナリオだ。
巽氏よると、噴火M7の超巨大噴火が今後100年間で起きる確率は0・9%、M8だと0・3%だ。一見少ない数字に見えるが、1995年に大規模な被害をもたらした阪神淡路大震災の30年発生確率が0・02~8%だったことを踏まえると、決して小さい数字ではないと見る。
さらに、注目するのが「危険値」での比較だ。危険値とは事故や災害がどれだけ切迫しているかを示す指標で、想定死亡者数に年間発生確率をかけて算出される。
例えば、交通事故では、年間4千人が死亡しているので、想定死亡者数は4千人、年間発生率は交通事故が起きない年はないので100%、危険値は4000だ。同じように計算すると、台風・豪雨災害の危険値は100、水難事故は800となる。危険値の高い交通事故の対策に優先的に取り組むのは合理的な判断となる。
それでは地震や噴火の危険値はどうか。首都直下地震は危険値900、南海トラフ巨大地震は12800、富士山噴火は14だ。九州で超巨大噴火が起こる危険値は2400。台風・豪雨災害や首都直下地震などの対策よりも優先度は高くなってもおかしくはないが、そうはなっていないのが現状だ。巽氏はこういう。
「超巨大噴火の危険値は高いにもかかわらず、災害としての認知度は低く、対策もほとんどされていません。超巨大噴火はいつ起きてもおかしくない災害だと見るべき。このままでは日本が消滅しかねません。避難計画や降灰してもライフラインを止めない対策をするなどし、犠牲者を半分に抑えることができれば、日本は消滅せずに残ることができると考えています」
火山大国である日本のリスクに改めて向き合い直す必要が出てきている。(AERA dot.編集部・吉崎洋夫)
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