自民党内で財政政策を巡る主導権争いが起こり、波紋を広げている。アベノミクスを継承し、積極財政の旗を振る高市早苗政調会長に対し、岸田文雄首相が財政再建を重視する姿勢を見せ、党内で対立が激化している。
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「選挙に勝てば、今度は足元が騒がしくなる。そういう歴史だよ。騒がしくなりすぎると、政権基盤が揺らぐ」(自民党の閣僚経験者)
昨年10月の衆院選で甘利明前幹事長が小選挙区で敗北したことにより、茂木敏充幹事長、林芳正外相という新しい布陣を敷いた岸田首相。自民党幹部は人事についてこう解説する。
「次期首相を狙うと公言している高市氏の動きを、幹事長である茂木氏の力で抑えようというのが、岸田首相の狙いのひとつだ。茂木氏も首相を目指している。岸田首相は、党の重要政策はすべて茂木氏に任せているので、政調会長の高市氏の影がうすくなっていた」
今年夏に予定される参院選の公約の策定作業はすでに進んでいる。中でも経済政策は、公約の要になる。岸田首相は安倍政権時代の積極財政とは方向を変え、財政再建を打ち出している。
岸田首相は昨年12月6日の臨時国会での所信表明演説で「危機に対する必要な財政支出は躊躇なく行い、万全を期します。経済あっての財政であり、順番を間違えてはなりません。 経済をしっかり立て直します。そして、財政健全化に向けて取り組みます」と訴えていた。その翌7日には自民党内に「財政健全化推進本部」を首相(総裁)直轄として立ち上げた。本部長には、茂木派の元会長でもあった額賀福志郎元財務相、さらに前財務相の麻生太郎副総裁が最高顧問についた。
初会合には岸田首相も駆け付け、「自民党にとって大切な使命」と挨拶したが、これには伏線があった。
この6日前、高市政調会長が党内にもともとあった組織「財政再建推進本部」から「再建」の文字を削り、「財政政策検討本部」と名称変更。本部長に西田昌司参院議員、最高顧問に安倍晋三元首相を迎え、組織改編に踏み切った。