長崎幹広(ながさき・みきひろ)/ストレイムアートアンドカルチャー代表取締役/1998年成城大学卒。総合広告会社・旭通信社(現ADK)、クリエイティブエージェンシー「風とバラッド」などを経て、2017年より現職。
長崎幹広(ながさき・みきひろ)/ストレイムアートアンドカルチャー代表取締役/1998年成城大学卒。総合広告会社・旭通信社(現ADK)、クリエイティブエージェンシー「風とバラッド」などを経て、2017年より現職。

■ジュースを飲むくらい気軽にアートを

「アートへの間口を広げる」ことを目標にこのサービスを立ち上げたのが、ストレイムアートアンドカルチャー・代表取締役の長崎幹広さん(45)。利用者はアートコレクターだけでなく、一般の人も多いという。

 長崎さんは広告会社を経て、広告制作会社の立ち上げに参画。そのメンバーには現代アート作家がいたこともあり、アーティストの個展に足を運ぶようになった。購入した作品を家に飾り、それを見るたびに「頑張ろう」と奮起できる自分に出会えた。

 アート作品には思いがけない価値があると感じたが、アーティストの大半はアーティスト活動だけでは生活できていないことも知った。多くのアーティストはギャラリーに所属して発表の機会を得るが、所属できるのは常識的には1ギャラリーでせいぜい10人程度。

「歴史に名を残すアーティストがいるかもしれないのに、活躍できるのは一握り。彼らが活躍できるプラットフォームを作れないかと思った」

 理想としたのは「ジュースを飲むくらい気軽にアートに触れられる」世界。だが、なにせ作品は高額だから、お金持ちの世界でしか流通されない。「ならば、”持ち合い”の思想をアートにも応用できないか?」と考えたのがストレイムだ。サービスをスタートさせてまだ2年だが、扱いは約50作品、作品の時価総額は1億円を超える。

■大化けする可能性にワクワク

 作品を共同保有しても、自分の家に飾ることはできない。冒頭の黒田さんも、ストレイムが行った作品の展示会に行き「展示会場で観た」程度だという。保有する作品には含み益もあるが、当面売るつもりはないという。なぜだろう?

 お金持ちしか知らない世界を覗くことができたことも、理由のひとつ。共同保有したことで、アーティストに興味が出たことも大きい。だが、なんといっても「大化けする可能性」にワクワクするのだという。

 企業の株ももっているが、黒田さんは日々、その変動が気になってしょうがない。もちろん共同オーナー権の価格にも上がり下がりはあるが、今後名も無いアーティストが世界に羽ばたくなど、大化けする可能性を考えると「なんだか期待しかない」のだという。

 作品を共同保有しても、急に人生が変わるわけではない。目の前には変わらず日々の仕事があり、家族の生活を支える義務もある。でも、黒田さんはこう言う。

「アート作品を通じて、大きな夢を見たいんです」

(監修/高橋紀成、文/メディアプロデュース部)