「男に刺された」と苦痛の表情の70代の男性が近くの交番に駆け込んだ。
事件は共通テストが実施される会場の東大前で起こった。
1月15日午前8時半ごろ、東京都文京区の東京大近くの路上で、高校生の男女2人と70代の男性の計3人が刃物のようなものでいきなり切りつけられた。
事件現場となった農正門の正面にあるコンビニで働いていた男性によると、「共通テストのメインの受験会場は本郷キャンパスの方で、弥生キャンパスの方は比較的少ない」といい、受験生は当時、200人ほどいたとされる。
同じくコンビニで働く女性は「9時からシフトが入っていたので、ちょっと怖いなと思いました」と話す。
また、弥生キャンパスから出てきた東大の男子学生は「11時頃に大学にきたが、学内でアナウンスはなかった」と様子を語った。
警視庁によると、3人は背中などを刺され、高校生2人は意識があるが、70代男性は重傷で緊急手術を受けているという。警視庁は現場付近にいた愛知県名古屋市在住の高校生の少年(17)を殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。
警視庁少年事件課関係者によると、少年は「勉強していても上手くいかず、大きな事件を起こして自分も死のうと思った」と供述しているという。また捜査関係者によると、犯行に使われた刃物は刃渡り13センチほどで、自宅から持ち込んだと話しているという。
警視庁によると、事件現場の東大は15日から始まった大学入学共通テストの試験会場で被害者の高校生2人は受験生だという。少年は高校生2人と70代男性と面識はないとみられる。事件直前には最寄駅「東大前」で木片が燃える放火事件も発生し、「少年が『火をつけた』と供述している」という。
24人の犠牲者を出した大阪のビル火災に続き、またしても被害が出てしまった、拡大自殺とみられる今回の事件。捜査関係者は事件の未然防止の難しさを指摘する。
「最近増えている、拡大自殺の個人テロだ。被疑者も受験生で勉強のストレスを感じていたことが供述から明らかになっているが、事件を起こせば受験がなくなるとか、最近の事件に触発されたとか、本人が腹の中に犯行計画を収めているかぎり、未然防止は難しい」