しかしまぁ、パンダ。問答無用、完全無欠にキュート。パンダ大嫌いって人がいるのか? いるとしたら、よほど奇を衒ったことを言いたがる目立ちたがり屋か、パンダに迷惑を被っている人だろう。
見た目もそうだけど『パンダ』という言葉の響きがまた可愛い。破裂音の半濁音の「ぱ」で始まり、「ん」を挟んで、濁音の「だ」。完璧。『ぱ』のすっとぼけた解放感。両の手を思いっきり開いて、目を見開いて、口をいっぱいに広げて、のどちんこを震わせながら破顔一笑の明るさ。……からの『んだ』。ここです、ポイントは! 東北地方のどこぞの方言にも似た『んだ』。相手の意見に同意、肯定の『んだ』。その響きの温かみ、親しみやすさ、土の香り。「ぱ・です」? 「ぱ・なり」? 「ぱ・ぞなもし」? 「ぱ・やで」?「ぱ・だよ」? 「ぱ・っすね」?……いやいや、やっぱり『ぱ・んだ』だね。
こういうどうということのないお題が一番書きにくいんだよな……だから、もう、パンダ、嫌い。迷惑だよ、パンダ。お前の名前は今年から「ゲシュタルト」だ! 『ゲシュタルトの街・上野』。いいね。……さぁ、寄席に行こう。
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。新刊書籍『人生のBGMはラジオがちょうどいい』(双葉社)が発売。ぜひご一読を!
※週刊朝日 2022年1月21日号